民間転用に立ちはだかる型式認証のカベ
しかし、現実にはそう簡単なものではないことが判明したようだ。民間機として各国の航空当局から型式証明などを取得するには、安全性などの観点から図面や実地試験など無数のチェック項目を突きつけられる。必ずしも明文化されていない部分も少なくないとされ、完成機開発のノウハウに長けたメーカーでなければ四苦八苦するのはMRJの例を見ても明らかだ。
三菱航空機はMRJの初号機納入を2018年半ばとしているが、設計変更などを重ねており、5度目の納入延期が確実視されている。
こうした中、民間転用を強行すれば、MRJの二の舞となりかねない。そうすれば莫大なコストが発生し、ただでさえ膨らんだ開発費がさらに高騰。結局は機体価格に跳ね返り、民間機市場開拓の足かせとなる。つまりは量産効果どころか逆効果になりかねないとの危機感を川崎重工首脳が抱いたとみられる。
「軍用機」としての海外輸出も簡単ではない
民間転用を見送った以上、量産効果を狙うために最後に残るのが「軍用機」としての海外開拓の道だ。日本政府は2014年、防衛装備移転3原則を閣議決定し、条件付きながら防衛装備品の輸出を容認した。これを受けて川崎重工も既に、C2などの輸出チームを発足させた。目下、日本政府がニュージーランド政府などに輸出交渉を持ちかけている模様だ。
ただ、高度な政治判断が絡む防衛装備品の輸出は一筋縄ではいかない。川崎重工もメーカーとして絡んだオーストラリアとの潜水艦の共同開発案件は当初は日本が有力視されながら、武器ビジネスの作法に精通したフランスにさらわれたのは記憶に新しい。
欧米メーカーへのサプライヤーとしてだけでなく、より付加価値の高い完成機メーカーとしての立ち位置を確保したい日本の航空機産業。しかしハードルは思いのほか高いことが、近年鮮明になりつつある。様々なリスクを総合的に考えると、C2の民間転用を止めるという川崎重工の判断は、現段階では「妥当」と言わざるを得ないのが厳しいところだ。
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