将来の税率一本化も視野

 昨秋にビールで大型商品「ザ・モルツ」を投入したサントリービールは、引き続き試飲イベントなどを通じて同商品の積極的な販促を展開する考え。主力の「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドからは、上面発酵で華やかな香りのエールタイプ「ザ・プレミアム・モルツ〈香るエール〉」を3月1日に売り出す。サッポロビールは2015年に販売量が21年ぶりに前年を上回った「黒ラベル」を、「エビス」とともに拡販する。黒ラベルでは初めて、全国販売の派生商品も売り出す計画だ。

 ビール強化の宣言は珍しいものではないが、例年であれば第三のビールで機能系の商品を大々的に打ち出すなど、メーカーが主眼を据える商品やカテゴリーに多少のばらつきはある。ところが、今年は4社とも発表会の時間の大部分を割いたのはビール。「まずはビール、とにかくビールだ」(サッポロの尾賀真城社長)と強調した。

 背景にあるのは「ビール回帰」が進んでいるとの分析だ。アサヒはアベノミクスの恩恵などによる景況感の改善で、「消費者の本格志向が高まり、発泡酒や第三のビールからビールに顧客が戻っている」とみる。さらに、政府・与党が進める税制改正議論では、税率に格差のあるビール、発泡酒、第三のビールの税率を調整し、将来的な一本化も含めて検討がされている。

 税率の低い第三のビールの酒税を引き上げ、逆にビールを下げる「ビール減税」が行われれば、ビール回帰の流れがさらに加速する。酒税分を除いてもビールの収益性は他の2つに比べて高いとされ、「販売量以上に、ビールの売り上げが伸びることは収益面でのメリットが大きい」(キリンの布施孝之社長)というわけだ。

 それでは、ビールがけん引する格好で縮小する市場には歯止めがかかるのか。4社の2016年の計画を並べてみると、ビール系飲料ではキリンを除く3社が前年プラスを見込み、ビールに限っては4社とも2~6%増との高い目標を掲げている。それでは市場見通しはどうかといえば、4社の予測はビール系飲料で1~2%減、ビールも前年並みから1%減というものだ。

計画と実績に乖離

各社のビール系飲料、ビールの計画値と市場予測
各社のビール系飲料、ビールの計画値と市場予測
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 もちろん、目標はあくまで目標として、市場予測よりも自社の計画を高めに設定するのは企業として当然だろう。だが客観的に見る限り、12年連続で需要が沈む厳しい前提の上で、各社が商品や販売の戦略を立てなければならないのは明らかだ。そして問題は、業界では年初の計画を確実に達成できたケースが近年ほとんどなく、大きな乖離が生じているということだ。

 「従来のシェア競争ではなく、価値競争に移らなくてはならない」(アサヒの小路社長)。「基幹商品のブランド力を高めて、しっかりとロイヤルユーザーを増やすことが大事」(サントリーの水谷徹社長)。こうした意欲や問題意識は各トップに共通しているが、それでも現場では目に見える数字を追い、いかに他社より多く売るかが重視されるのはいかんともしがたいのが現状。酒税改正も見据えた各社のビール強化策が奏功するか、販売動向が注目される。

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