経済再生のサポート役は日本か

蔡氏は台湾の人々の期待に応えられるだろうか

 アジアでは昨年末に東南アジア諸国連合(ASEAN)が域内での人・モノ・カネの動きを自由化させるアセアン経済共同体(AEC)を発足させた。米国主導のTPP(環太平洋経済連携協定)といった枠組みも固まりつつあり、中国主導の国際金融機関であるアジアインフラ 投資銀行(AIIB)も誕生した。周囲の国々が様々な枠組みに参加して自国の競争力を培う中で、台湾は取り残される危機にある。蔡氏はTPPへの参加も前向きに検討中だ。

 選挙後の会見で蔡氏は、経済再生の実現に向けて必要なサポート役として「日本」の名前を複数回挙げている。選挙集会では、記者が日本人と分かると、「日本の助けが必要だ」と手を握って話しかけてきた台湾人男性もいた。

 日本政府・与党は台湾総統選での民進党の蔡氏の勝利を歓迎している。中国に接近して歴史認識や沖縄県尖閣諸島などを巡って中台で対日共闘を強めていた馬英九総統とは異なり、蔡氏が日本との関係を重視しているためだ。

 東シナ海や南シナ海への海洋進出を図り、経済的影響力を強める中国をにらみ、台湾との関係を重視する安倍晋三首相は自民党の野党時代に台湾で蔡氏と会談。昨年10月には来日した蔡氏と密かに都内のホテルで接触するなど布石を打ってきた。TPPに関しても台湾の交渉参加を後押しする検討を進めており、台湾経済の中国への傾斜にくさびを打ち込む考えだ。

 果たして、台湾は蔡氏の下で経済再生を果たすことができるだろうか。

 感情では飯を食えない――。

 前出の学生の本音が、台湾の人々の不安の根底にある。蔡氏はその不安に応える未来を描けるか。初の女性総統の手腕が問われる。