「理想的なリーダー」対「本音でぶつかる改革者」

 これまでの大統領候補は、自らが「理想的なリーダー」であることを証明するようなメッセージ発信が多かった。少なくとも最終候補に残る人たちは皆、そのように見せてきた。つまり候補者自身に目を向けさせ、リーダーとしての資質を認めさせるような発信をしてきたとも言える。

 これに対してトランプ氏は、リーダーとしての自分ではなく、問題を指摘して攻撃することで、具体的な問題点に目を向けさせるような発信が多く、国民が自分と同じようなところに問題を感じ、怒りをぶつける人物だということを印象付けようとしていたと見受けられる。それはまたクリントン氏の話し方が常に先生口調で、面白みがないキャラクターであることの対極でもあった。

 例えれば、みんなが目標とするような人物ではなく、隣で一緒にスポーツの試合を見てヤジを飛ばしながら盛り上がっているような雰囲気で、既存路線を否定する。従来の政治家なら「タブー」と見られるところに踏み込んでいるのに、そのキャラクターから「正直」という印象を与えるところもあった。そうした様子が支持者にとっては「本音でぶつかる改革者」のように見えていたのかもしれない。

 米ネットメディアによる調査で、クリントン氏とのツイッター比較では、クリントン氏の方がはるかにポジティブなツイートが多かったということが示されている。ポジティブもしくは中立のツイートが、クリントン氏は77%、トランプ氏は55%で、トランプ氏のツイートの45%はネガティブなものだった。

 トランプ氏がこのような方向性を選んだ理由として考えられるのは、もちろんもともとの性格もあるだろうが、ほかの候補者と違って政治については未経験であり、同じ路線で戦えば政治リーダーとして同列に比べられる可能性が高く、それを意識的に避けたということが十分に考えられる。

 また米カーネギーメロン大学の調査では、トランプ氏がスピーチで使う英語は小学生レベルだということが明らかになっている。これは「低レベル」という捉え方もできるが、より多くの人にメッセージを届ける「平易な」英語だったという捉え方もできる。数々の専門家がチームでプロデュースする大統領選挙であることを考えれば、これまでの政治家とは違うということを言葉でもスタイルでも感じられるような方法を意図的に選んできたということなのだろう。

 もっとも、そんなトランプ氏がSNS上で大きな発信力を持つに至った裏には、日本のメディアではほとんど紹介されてこなかった20代の一人の若者の存在がある。ジャスティン・マッコーニー(Justin McConney)氏だ。

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