2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。トランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回の記事も、「トランプ解体新書」に収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。

 メキシコで18年間暮らしているが、いつも陽気な印象の国民性とは打って変わったどんよりした憂鬱なムードが漂う日を2回体験している。

 1度目は、2002年日韓共催ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、メキシコ代表と米国代表が対戦した翌日だ。この試合に勝てば、メキシコは初のベスト8進出が決まる。同じ北中米カリブ地域で戦ってきた国であり、絶対に勝たなくてはいけない大一番である。隣国の大国との政治力・経済力の差は揺るぎない現実であっても、少なくともサッカーでは、米国を上回ってきたメキシコにとって、割合楽な対戦相手のはずだった。

 ところが、この試合でメキシコ代表はまさかの敗北を喫する。翌日、道行くメキシコ人の暗い表情、昨晩のサッカーの試合のことには言及しないメキシコ人の友人。マスメディアでは、大舞台で米国代表に負けた屈辱を報道するものの、いつもはエネルギッシュなコメントばかりするスポーツ番組の解説者たちの動揺を隠せない口調も印象的であった。メキシコはサッカーでも米国に負けてしまったのだ。

 そして、2回目の体験は2016年の11月9日。米国の大統領選の投票日の翌日だ。

メキシコと米国の間にある国境。カラフルだが「SOS」と書かれている(写真:Guillermo Alonso提供)