イバンカ氏の「ハロー効果」

 もう1つ、選挙戦で彼を救ったのが、長女・イバンカ氏の存在だった。イバンカ氏は三児の母であり、メディアには、妻や母親の姿を見せつつ、モデル業をこなし、自らのファッションブランドを展開する実業家の一面もある。自分の好感度が低いことをよく理解しているトランプ氏は、選挙戦の間、常にイバンカ氏を近くに置いていた。美貌に恵まれ、知的で行儀の良い彼女による「ハロー効果」は計り知れない。

長女・イバンカの美貌が、トランプ氏の選挙戦を支えた(写真:ロイター/アフロ)
長女・イバンカの美貌が、トランプ氏の選挙戦を支えた(写真:ロイター/アフロ)

 ハロー効果とは、ある対象を評価する時、その対象の有する顕著な特徴に引きずられ、ほかの特徴についての評価が歪められる現象のこと。トランプ氏の場合、イバンカ氏という存在が強烈なインパクトを与え、ハロー効果によって、「イバンカ氏の実父であるトランプ氏もいい人間かもしれない」と聴衆に思わせたというわけだ。トランプ氏は自身や娘、妻が世の中からどのように評価されているのかを冷静に理解している。その上で、最も印象の良いイバンカ氏を隣に置き、そのハロー効果を期待したのだとすれば、適材適所のよく練られた戦略と言えるだろう。

好感度を高めるより、目的を果たすこと

 テレビ出演を通してメディアを熟知しているトランプ氏。強烈な肌の色や髪形によって、「老化」から人々の目をそらし、若々しさや四角四面でないという印象を付けるにはルールを逸脱した着こなしも辞さない。

 「オレンジ野郎」と罵られたりもしたが、それさえも「老化から目をそらす」という点で、トランプ氏の狙いは成功を収めたと言えるだろう。

 一般的に好感度や信頼感を高めることが「イメージ戦略」と思われがちだ。だが本来は「目的を達成する」ことこそがイメージ戦略の真の狙いだ。その点でトランプ氏は巧みなイメージ戦略によって、大統領になるという目的を果たすことができたわけだ。

 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売中です。ぜひ手に取ってご覧ください。

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