だが欧米では少し焼けた肌がステータスシンボルで、リッチな証しとされている。その上、焼けた肌は健康的で精悍な印象を与える。とあれば、トランプ氏がそれを利用しないわけがない。そこでスプレータンニングに挑んだのではないだろうか。
もちろん、それでも「オレンジ色はおかしい」と感じる人も多いはずだ。だがトランプ氏のイメージ戦略にとって、何よりも優先させるべきなのは「実年齢よりも若く健康的に見せること」や「実際には顔の上に表れている“加齢の証し”から話題をそらさせること」にあるようだ。
シワ、くすみをカモフラージュ
彼は70歳の老人である。それでも多くの人は、あのオレンジ色の肌と強烈な発言、不思議な表情に気を取られて、彼の顔をまじまじと見て「老人だな」と感じることは少ないはずだ。
もしトランプ氏がそれを狙っているなら、オレンジ色の肌にした戦略はあまりに巧みだ。白人男性にありがちな、老化による細かなシワと乾燥による肌のかさつき、くすみ、ツヤのなさなどを、視覚的にカモフラージュしているからだ。
テレビや写真に映る際には、このオレンジ色の肌の上に、さらにファンデーションを塗って、ほほやあごなどに濃いめのシャドーを入れているようだ。これで、あの焼けたオレンジ色の肌が完成する。人の目をそらせ、話題をすり替える作戦は大成功だ。それもこのオレンジ色の肌は、選挙戦中によく身に着けていた赤色のネクタイにぴたりと合う。
下にトランプ氏の本当の肌の色に近い写真も掲載しよう。トランプ氏のもとの肌は白っぽいピンクで、オレンジ色の肌よりも、もっと物静かな印象を与える。逆にオレンジ色の肌の時のようなギラリとしたパワーはあまり感じられない。ぶっ飛びすぎとも思えるオレンジ色の肌だが、そこには彼の考え方や戦略などが隠されているようだ。

おかしな髪形だけれどカツラではない
オレンジ色の肌と同じくらい、今回何度となく「あの髪形は何?」という質問も受けた。横から見ると分かるように、トランプ氏は頭頂部から前側に髪を引っ張り出してきて、生え際を覆い隠すように前髪を作っている。
肌の色がオレンジ色のため、肌と髪の色の差がほとんどない。その上、頭頂部から引っ張ってきている前髪は非常に薄く、額が透けて見える状態。サンバイザーのように飛び出した半透明の前髪が、額と目元にかかっている。
これによって、対峙する相手は、トランプ氏の目になかなか焦点が絞れない。相手の集中を妨げ、トランプ氏の表情を読み取られないようにしているのだとしたら、その戦略もあっぱれだ。

トランプ氏の髪形を巡っては、カツラ疑惑や植毛疑惑が頻繁に取り沙汰された。それを払拭すべく、トランプ氏はテレビ番組の中で子供に髪の毛を引っ張らせたり、選挙集会で聴衆の女性に髪を触らせたりして、「地毛」であることをアピールしてきた。どんなに枯れてもふさふさとした地毛があるのは現役の証し。男性としてのプライドもあるのだろう。
実際、スプレーをしっかりかけてあのヘアスタイルを作っていることは確かである。選挙集会でトランプ氏の髪の毛を触ることになった女性に対しても、「あんまりかき回さないように。ヘアスプレーを使っているから」と注文を付けたくらいなのだから。
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