県が動くも具体策はなし

 高野病院はもともと、高野院長が高齢であったため複数の非常勤医によって支えられていた。院長の死亡後も診療を続けてこられたのも、ボランティアに加え、こうした非常勤医が継続してサポートを続けたことが大きい。

 だが、尾崎医師が指摘しているように、自転車操業ではいずれ限界が来る。これから永続的に地域住民を支えていくには、「県や国が主導する支援が不可欠になる」(尾崎医師)。

1月3日、遠藤智・広野町町長らが高野病院の現状を訴える記者会見を開いた。左から、尾崎章彦医師、遠藤町長、支援の会の坪倉正治医師

 福島県の内堀雅雄知事は1月4日に開いた記者会見で、「(高野病院の)医師確保に向けた支援を行う」と発言した。だが、6日、県と高野病院、広野町、支援の会の関係者らによる非公開の会議が開かれるも、県から具体的な解決策が示されることはなかったという。

「美談なんかではない」

 背景にあると考えられるのは、「一つの民間病院を県(や国)が助けるわけにはいかない」という立場だ。確かに高野病院は一民間病院に過ぎないが、震災後に双葉郡を支える医療機関として果たしてきた役割は「公共の役割」と言っても過言ではないだろう。

 さらに高野病院の問題は、「被災地」という特別な場所だけが抱える問題ではない。「医師不足」は、過疎化・高齢化が進む日本の地域社会のどこにでも起こり得る現象だからだ。

 「高野病院の話はともすれば美談になりやすい。でも、それだけではなく、国や県、私たち一人ひとりが今後の地方医療のあり方について、もう一度、考え直す時が来ている」(尾崎医師)

 高野病院の騒動を「被災地で起きた美談の一つ」で終わらせてはならない。