アライアンスにアマゾンやウーバーも参加

 今回のe-Paletteに込められているのは、プラットフォーム企業に生まれ変わろうとするトヨタの決意だ。

 米アマゾン・ドット・コムはクラウド・コンピューティング・サービスや小売り事業者向けの配送や決済サービスを提供することで巨大なプラットフォーム企業に変貌した。米グーグルや米フェイスブックなどのテック企業もそれぞれのエコシステムを構築している。いかにしてプラットフォーム企業に生まれ変わるか。それが伝統的な大企業が直面している最大の課題といっても過言ではない。

 トヨタが目指している世界もそこだ。

 保有から利用に自動車ビジネスが変化する中で従来のような販売台数を追うビジネスモデルはいずれじり貧になる。一方、大都市を見れば渋滞や汚染は相変わらず激しく、AIや自動運転などのテクノロジーを活用して自動車利用を最適化していく時代は確実に来る。eコマースの拡大によって宅配のニーズも増えていくだろう。

 その地殻変動の中で生き残っていくためには、自社のテクノロジーを磨くだけでなく、モビリティ関連のサービスを立ち上げようとする企業のインフラになり、トヨタ独自のエコシステムを構築していく必要がある。グーグルや米ウーバー・テクノロジーなどが顧客の情報を吸い上げる中、顧客との接点を増やしていく上でもプラットフォーム化は不可欠だ。

 その目線で見ると、e-Paletteはいわば自動運転技術やセキュリティ、データ解析、決済などトヨタが持つ様々なテクノロジーやサービスの上で動く一つのアプリだ。このサービスプラットフォームに乗れば、トヨタの最先端テクノロジーの上で手軽にライドシェアや無人配送などが可能になる。

 豊田社長が発表したアライアンスの初期メンバーにアマゾンや米ピザハット、ウーバー、中国ライドシェア大手の滴滴出行などが名を連ねたのは、モビリティ・プラットフォームとしての可能性を見いだしているためだろう。車両制御などの技術がシェアされれば、参加企業はトヨタの技術を使って自身のモビリティ・サービスを構築できる。

 また、今回提示されたもう一つのビジョンは移動手段としてのクルマがコミュニティそのものになっていくという世界観だ。

 野菜や靴、雑貨などを積んだe-Paletteが複数集まれば、街の広場がマーケットプレイスに変わる。そこにカフェやホテル、クリニック、ミニシアターのe-Paletteが来れば、それは一つコミュニティであり小さな街だ。

 「第2のリビング」という表現があるように、移動を超えたコンセプトは様々に提示されている。バンを改造した移動式店舗も既にある。ただ、今回のe-Paletteはスペースとしての概念がより強い。今後はクルマ自体がコミュニティづくりのツールになっていくということをトヨタは示したように思う。

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