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 日産自動車の前会長で、会社法違反(特別背任)の疑いで逮捕・勾留されているカルロス・ゴーン氏が8日、裁判官が容疑者に勾留理由を説明する勾留理由開示の手続きのために東京地裁に出廷した。裁判官は勾留理由を「証拠隠滅や逃亡の恐れがあるため」とし、ゴーン氏は「根拠のない容疑をかけられ、不当に拘束されている」と訴えたという。勾留理由の開示は憲法で保障されたものだが、2017年度の実施率は0.56%という「ほぼ使われていない制度」。ただ、昨年11月19日の逮捕以来、発言機会がなく、イメージ悪化だけが進むゴーン氏には「使える制度」と映ったようだ。

(写真:竹井 俊晴)

 紺色のスーツ、白いワイシャツ姿で法廷に姿を現したゴーン氏は、特別背任容疑で逮捕・拘束されていることについて、「日産には一切の損失を負わせていない」といった自らの言い分を強調し、早期の保釈を求めたという。

 勾留理由開示とは、被疑者や被告人らが公開の法廷で、勾留されている理由を聞く手続きだ。日本国憲法34条に基づき、刑事訴訟法で規定されている。

 ただ、2017年度の司法統計によると、裁判所が勾留決定した10万4529件のうち、開示請求があったのは583件。0.56%にすぎない。使われない理由について、鬼頭・竹内法律事務所の鬼頭治雄弁護士は「手続き自体は簡単だが、裁判官は『記録から明らか』といった決まり文句を述べるだけで、あまり意味がないと見られている」と語る。

 勾留理由開示の手続きによって、捜査機関には、記録を裁判所に提出するなどの手間が発生する。裁判官も「大抵は木で鼻をくくったような対応をする」(開示手続き経験のある弁護士)といい、印象が悪くなることへの懸念も背景にはあるようだ。

 ただ、今のゴーン氏にとっては利用価値がある制度だ。最初の逮捕以降、勾留延長と再逮捕の繰り返しで、年末年始も東京拘置所で過ごした。その間、検察や日産寄りとみられる情報のリークが続き、「悪人」イメージが先行している。

 「自分は日産に20年尽くしてきた。不正行為で追及を受けるようないわれはない」。逮捕以降、体重が10kg近く痩せたとされるゴーン氏は、8日の意見陳述で、これまでの日産と日本経済への貢献を強調した。現容疑での勾留は1月11日まで。「折れないゴーン氏」の4度目の逮捕はあるのだろうか。

勾留理由開示の傍聴席を求め、1122人が並んだ(8日朝、東京・霞が関の東京地裁)