森トラストは7日、東京都港区にある37階建てのオフィスビルで、上層階まで商品を届けるサービスを始めた。運び役は、ホットコーヒーを収めた円筒形のロボットで、1階で運営するカフェからエレベーターに乗り込む仕組みだ。「コーヒーを飲むのに地上まで降りるのが不便」。超高層ビルの最大の弱点を補う狙いがある。

米シリコンバレーのスタートアップ、サビオークが開発したサービスロボット「リレー(Relay)」を使い、ITベンチャーのショーケース・ギグ(東京・港)が開発したアプリで注文・決済する。店員がロボット上部のふたを開けて商品を入れ、テナントの入居階と位置を示す番号を入力する。リレーのシステムがエレベーターと連携しており、注文した人のフロアに移動するまでに最短でおよそ5分。到着し次第、スマートフォンにメールで知らせてくれる。
森トラストは今回の取り組みを半年間の実証実験と位置付けている。ニーズや技術的な課題を確かめるといい、2020年3月に港区で開業する38階建て「東京ワールドゲート」での本格導入を見込む。
オフィス需要に目を向けると、20年の東京五輪を控えて再開発が進む都心では超高層ビルの新設が相次ぐ。需給バランスが崩れると予測される中、高層ビルは建築技術が成熟し、建物自体のイノベーションは期待しにくい。そこで森トラストは「ロボットの活用で他のビルにはない機能をプラスし、不動産価値を引き上げる」(イノベーション戦略室の木原圭一専門部長代理)という絵を描く。今回の取り組みは、優良テナントを巡る争奪戦が激しくなり、不動産各社がソフト面での新たな競争を迫られている現状を映す。
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