サウジ政府は元アルカイダのテロリストたちを処刑してテロ対策に積極的であることを示すと同時に、国内保守派の支持をつなぎとめるためにシーア派の指導者ニムル師を処刑。サウジの意向を無視してイランの機嫌ばかり取ろうとする米国に対する牽制の意味を含めたのであろう。

 痛みの伴う緊縮策に対する国民の不満を外に向けさせ、自国に不利な戦略環境が出来つつあることに対しそれを容認する米国への不満の意志を示し、自らスンニ派諸国の同盟を強化してイランと対峙する…。少なくともそうした姿勢を鮮明にすることで、サウジ政府は米国を牽制する大きな賭けに出たのだと考えられる。

スンニ派・シーア派双方の過激主義が強まる

 サウジ政府は、このような国内・国際的な状況からイランとの関係を悪化させているが、イランとの直接的な戦争に突き進もうなどと考えているわけではない。ただ、イラン革命防衛隊などシーア派強硬派が、中東地域のシーア派勢力(ヒズボラ、イラク・シーア派、アサド政権など)に対する支援を強化し、各地の強硬派が暴れて宗派抗争が激化することは十分に考えられる。また、バーレーンやサウジ東部でシーア派による反政府デモなどが激化し、サウジ政府が強硬に取り締まることで、暴力の連鎖が拡大する可能性はある。

 また、スンニ派テロリストがシーア派権益に対してテロを活発化させる可能性もある。それぞれの宗派の住民が混在して暮らす地域では、宗派抗争激化に対する注意が必要となろう。スンニ派とシーア派の宗派対立が激化すれば、双方の過激派の活動が正当化される風潮が強まり、過激主義が強まってしまう。今後どこでどのような暴力が吹き荒れるか予測することは困難だが、ただでさえ不安定な中東の危険度がさらに増したことだけは間違いない。