①マンションの地盤を確認

 1つ目はマンションの所在地の地盤の状態を大まかに把握することだ。

 横浜のマンションでは、一部の杭の先端が強固な地盤(支持層)に到達していなかった。波打つような地層だったためだ。「支持層が一定の深さであれば杭の長さも同じなので、施工は容易。もしデータを改ざんしたとしても支持層に到達している可能性が高い」と地盤調査のスペシャリストである応用地質の上野将司技師長は言う。

 「地盤など専門的過ぎて分からない」と考えがちだが、実はそうでもない。「比較的問題になりそうなエリアの絞り込みは可能。マンションが立っている場所が以前はどのような状態だったのか、古い地図を見れば分かる」(上野技師長)。マンションを建てる際に、山や谷を平坦にする造成を行ったエリアか、中小河川沿いに位置し軟弱な土砂がたまっているようなエリアであれば、地層が波打っている可能性が高い。そうしたチェックは有効だろう。

②ジョイント部分にずれはないか

 大規模マンションの場合、マンションの棟と棟をつなぐジョイントがある。横浜のマンションにも渡り廊下があった。その手すりに2~3cmのずれが見つかったことが、マンション傾斜発覚のきっかけとなった。

 多くの欠陥マンションを調査してきた日本建築検査研究所の岩山健一代表は「傾きは非常にわずかなため、人間の感覚では到底分からない。ずれで把握するのが一番早い。ビー玉を転がす方法は、構造によって床の表面だけ傾いている場合もあるので参考にはならない」と話す。

③外壁のひび割れは深さを重視

 もっとも複数棟ではなく単独で立っているマンションの場合、ジョイント部がないためにずれを確かめることができない。その場合は外壁をチェックするのが有効だ。外壁がコンクリートの場合はひび割れていないか。タイルの場合は浮きやはがれがないか。「注意深く見れば専門家でなくても見つかる。これが、構造に不具合があることの大きなメッセージになる」(岩山代表)。

 マンションの形状や高さによって、ひび割れが発生する場所は異なる。住宅評論家の櫻井幸雄氏は、ひび割れの「深さこそポイント」だと指南する。「コンクリートの中の鉄筋が見えるほど深いひび割れは極めて異常な状態。すぐに管理会社や売り主に連絡し、調査してもらうべきだ」。

 外壁でチェックしにくい場合は各住戸に設置されている水道や電気のメーターボックスを開ける手もある。柱がコンクリートむき出しの状態で見られる場合が多いからだ。一般的にボックスは各戸の玄関に隣接する場所に設置してある。「ひび割れだけでなく、後から補修したような跡があれば腕の悪い業者が施工した可能性があるし、コンクリートに木片などの異物が交じっていないかも確認できる」(櫻井氏)。

④窓から離れた壁と床の境目

 4つ目は室内の状態でコンクリートのひび割れを見抜く方法だ。窓から離れた位置にある壁と床の境目を見てほしい。「結露しようがない位置の床にカビがあったりフローリングが腐りかけていたりしたら、雨が壁を伝って入ってきている証拠だ。マンションで雨漏りすること自体が異常なこと。コンクリートにひび割れが発生している可能性が高い」(櫻井氏)。

⑤ドアやふすまなど建具の状態

 最後の5つ目は、ドアやふすまなどの建具の状態だ。柱や壁などが少しでも変形していれば、開けづらくなったりすることが多い。傾斜が見つかった横浜のマンションでも、ある住民は「確かに1階部分のドアが閉めづらくなっていた」と証言する。

中古流通価格に影響も

 2006年ごろからリーマンショックが起きた2008年9月までを、マンション業界は「プチバブル」と呼ぶ。低金利を背景にマンション購入者が急増、その需要に応えようと新興デベロッパーが相次いで分譲したためだ。

 横浜市のマンションが竣工したのは2007年。このため「大量供給時代に造られた物件は、建設時に現場作業員が不足しがちで、施工不良が発生しやすい」と見る向きがあるが、日本建築検査研究所の岩山代表はこう語る。「逆にマンション不況の時は下請け業者にコスト削減圧力がかかり、欠陥マンションの原因となる可能性がある。竣工時期で判断するのは賢明ではない」。

 あなたのマンションは大丈夫か──。これまで挙げた5つのポイントは欠陥マンションを見抜くきっかけでしかなく、所有者はもう一つ気にしなければならないことがある。マンションの資産価値だ。都内の不動産仲介会社の担当者はこう言う。「まだ目立った兆候は見られないが、今回の事件でマンションの買い控えが起きる可能性がある。新規分譲と中古流通の双方に影響が出ても不思議ではない」。横浜のマンション傾斜事件は、消費増税後、盛り上がりを欠くマンション市況に影響を及ぼしかねなくなっている。

(日経ビジネス2015年11月2日号より転載)