稼働を始めたばかりの「ギガファクトリー」の外観。現在は工場全体の約30%が完成した段階で、今後も追加投資して生産能力を順次拡大していく
稼働を始めたばかりの「ギガファクトリー」の外観。現在は工場全体の約30%が完成した段階で、今後も追加投資して生産能力を順次拡大していく

 ギガファクトリーで生産するのは「2170」と呼ばれる直径21mm、長さ70mmの円柱形の電池で、現在の主力車であるモデルSやモデルX向けの直径18mm、長さ65mmの「18650」電池より一回り大きい。セル1個当たりの容量も高まり、生産効率が向上するという。

 EVの低コスト化のカギとなるのが、部品コストで最大となる電池コストだ。そのために、ギガファクトリーが重要な役割を果たす。世界最大という規模のメリットを生かして、量産効果を高められる。さらにパナソニックなどの電池メーカーや材料メーカーと協業することで、材料から電池セル、電池パックまでを一貫生産できるようになり、バッテリーパックのkWh(キロワット時)当たりのコストを、従来品より30%以上削減することを目指す。

 電池コストの低減でEVの本体価格を安くしつつも、モデル3は1回の満充電で走行可能な距離(以下、航続距離)を215マイル(346km)以上にする。これまでEVの課題とされてきた航続距離の短さも、十分に克服できる。

 さらにモデル3のハードウエアは自動運転機能にも対応する。こうした特徴が注目を集め、モデル3は既に37万台以上の予約を獲得している。米国での予約金は1000ドル(約12万円)で、新規予約する場合の引き渡し時期は2018年半ばごろを見込む。

2018年に年間50万台のEVを量産

 好調な予約を受けて、テスラはモデル3の量産拡大を当初計画よりも前倒しする。米カリフォルニア州のフリーモント工場におけるEVの生産能力を、当初予定から2年早めて2018年にも年間50万台にする。

 ギガファクトリーはテスラとパナソニックの命運を左右する工場と言える。

 テスラにとっては年間50万台規模の生産を目指すEVの低価格化に必要不可欠な電池だからだ。同社初の普及価格帯のEVの成否は、高性能な電池を安価に生産できるかどうかにかかっている。

 パナソニックにとっても数千億円規模の巨額投資はプラズマテレビ以来の大きな“賭け”だ。EV向け電池でも韓国のLG化学やサムスンSDIとのグローバルな競争が激化する中、パナソニックはテスラと組み、世界最大のEV向け電池メーカーを目指して、リスクをとって攻めの経営に出た。

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