「寸劇と相関こそ、真」

 次の登壇者はS原T憲。U野がかつて勤めていた商社勤務。テーマに選んだMAP(和名・地図)理論とABC(和訳・知っててもそれだけじゃ困ります)理論を結びつける試みにはWBS在学中からコツコツと取り組んでいて、当時の指導教官及び研究仲間から好評だったようだ。

 2000年に上司からもらったというシドニー五輪オフィシャルらしき勝負ネクタイを身につけたS原のプレゼンで特徴的だったのは、ありがちなプレゼンにつきものの動画の代わりに、寸劇を取り入れたところだ。共演者にはWBSの卒業生を登用。誰も予想しなかった北島マヤと桜小路優のごとき息の合った熱演は、オーディエンスの視線のレーザービームを奪い、3%濃度の塩水に浸かったアサリのように口をあんぐりと開けさせた。さらには、外部機関が調査したデータもフル活用。「ん?それは強引では」と突っ込まれそうな解釈にも「相関がある」「かなり相関がある」「100%相関がある」と重ねて言い切る心の強さを見せつけた。

続いて、S原。寸劇で来たか
続いて、S原。寸劇で来たか
熱演からの…
熱演からの…
憂国のパワポへ
憂国のパワポへ
データで攻める。誰が何と言おうとすべては相関しているのだ!
データで攻める。誰が何と言おうとすべては相関しているのだ!
そして、少子化・日本を救うための画期的提言へ
そして、少子化・日本を救うための画期的提言へ

 S原の言いたいことはつまり、カーナビの普及が非婚率を高め、少子化の一因になっているということであった。

●S原に学ぶおバカ&おもろなプレゼンの極意
(7)テーマ選びに勝負あり。事前リサーチを怠るな。
(8)動画より寸劇。
(9)データを見せるだけでなく、力強く解釈を添えろ。

「聞き取れ、小さな声を」

 最後のプレゼンターはN谷J一。今回の登壇者の中で唯一、アカデミアに籍を置く人物だ。長髪・紺ブレ・ホワイトチノという出で立ちは、大学で教える自分がビジネスパーソンから「あいつ、自由でいいな」と羨ましがられていることを十分に意識しているように見えた。

 鶏肉をじゅわっと揚げたものなど、前の登壇者のテーマにちょいちょい触れながら進められた彼のプレゼンは、ビジネスのそれというよりは、学会発表のスタンダードであった。スライドに(懐かしのドラマなどの)図版を使うときには出典を明記する、取材で得たコメントには説得力を持たせるため発言者のポートレイトを添える、真偽が定かでない説に関しては権威(たとえば学長)の意見を聞いておきそれを誇示、(夜の街での)調査に要した費用を(領収証の写真という形で)公開するなど、研究発表として一分の隙のないものであった。オーディエンスはみな論文を書き研究発表をした経験があるため、現役研究者の繰り出す徹底した伝統的様式美に酔いしれた。

トリは、N谷。大学の先生である
トリは、N谷。大学の先生である
論文スタイルで
論文スタイルで
学生の聞き取り調査からの…
学生の聞き取り調査からの…
夜の街のフィールドワークへ
夜の街のフィールドワークへ
あれ、結論はかわいい教え子が多い、でしたっけ?
あれ、結論はかわいい教え子が多い、でしたっけ?

 N谷の言いたいことはつまり、群馬県太田市の繁華街は北関東の歌舞伎町であるということであった。

●N谷に学ぶおバカ&おもろなプレゼンの極意
(10)周囲の期待に応えるルックスで登壇せよ。
(11)自分以外の登壇者の持ちネタをアドリブで取り入れろ。
(12)確固たる型を持つ者だけが、型を破る芸を披露できる。

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