その間、ロマンポルノは「わいせつ」だと警視庁に摘発されても音を上げずにむしろ戦い、10分に1度という足かせも逆手に取って社会派と評価されるような作品もコミカルな作品も生み出すようになる。ルールさえ守っていれば自由に創作できる場となったロマンポルノは、多くの映画人を輩出する存在になったのだ。

道を開け

 伊地智はのちに『セーラー服と機関銃』など“一般映画”のヒット作を数多くプロデュースすることになる。同じくプロデューサー5人衆のひとりだった岡田裕は『天と地と』や『家族ゲーム』をプロデュースした。そして主演女優・白川和子は今も現役で女優を続けている。

 先の見えない混沌の中、「何か道が開けるはず」と一歩を踏み出した彼らの前に道は開けた。いや、彼らが新たな道を開いたのだ。

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 その「ロマンポルノ」をNHK-BSプレミアム『アナザーストーリーズ』で取り上げる。11月16日夜9時の放送を前に、プロデューサーの久保健一は振り返る。

 「実は当初はロマンポルノではなく、『ジャパニーズホラー』をテーマに番組を作ろうと考えていたんです」

 しかし、その調査の過程で大ヒットホラー映画『リング』の監督、中田秀夫がロマンポルノ出身であることを知る。調べると、ロマンポルノは多くの異才を輩出していた。長く争われた「わいせつ」を巡る裁判にも興味をそそられた。今年9月には日本を代表する監督たちがロマンポルノの新作を撮り下ろすことが発表され、注目を集めた。周囲に聞いたところ、特に女性から圧倒的に「ロマンポルノのことを知りたい」と言われた。そして久保は、実は怖い映画が少々苦手である…。

映画監督 中田秀夫。『リング』などでJホラーの旗手として世界的にも評価が高い中田は、ロマンポルノ終了の3年前に日活に入社。 映画づくりをロマンポルノの現場で学んだ
映画監督 山口清一郎。初めての監督作となったロマンポルノ作品『ラブハンター 恋の狩人』(1972年公開)は警視庁の摘発を受け、その後裁判へと発展。山口は被告としてその裁判を戦った。(C)日活

 日活さながら方針を転換した久保は、「NHK的にどうなのか」という思いを抱きつつ、「でもやはり、時代を描くうえで欠かせない素材だ」と確信し、放送にこぎつけた。久保の新たな道は開けるのか。
(敬称略)

新刊『今だから、話す 6つの事件、その真相
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当連載『時効スクープ~今だから、聞けた』でご紹介してきたNHK-BSプレミアム「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」の数々のストーリー。そこから選りすぐりの6つの事件を収録した書籍ができました。番組ディレクターたちの「現場の声」とともに、事件の新たな一面に光を当てます。
当時は話せなかったが、今なら話せる。いや、「真実」を話しておくべきだ――。過去に埋もれた「思い」を掘り起こすと、「知られざるストーリー」が浮かび上がってきました。

<改めて知る、6つの事件>

●日航機墜落事故 1985  レンズの先、手の温もり、「命の重さ」と向き合った人々
●チャレンジャー号爆発事故 1986  悲しみを越えて、「夢」を継ぐ者たちがいる
●チェルノブイリ原発事故 1986  隠されたはずの「真実」は、そこに飾られていた
●ベルリンの壁、崩壊 1989  「歴史の闇」を知る者が静かに、重い口を開いた
●ダイアナ妃、事故死 1997  作られたスクープ、彼女の「最後の恋の駆け引き」
●大統領のスキャンダル 1998  翻弄し、翻弄された3人の女と、2人のクリントン