アポロ13号爆発の様子

 誰もが知っている出来事の、ど真ん中の当事者ではない人物から、その出来事についての証言を得てきたNHK-BSプレミアム『アナザーストーリーズ』。その真骨頂とも言える回が、11月2日午後9時放送の『アポロ13号の奇跡 緊迫の87時間』だ。

 アポロ13号と言えば1970年4月、月への飛行中に酸素タンク爆発という致命的な事故に遭遇しながらも、3名の乗組員が無事、地球へ戻ったことで知られている。その知名度は1995年に公開された映画『アポロ13』で一層、高くなった。

 映画では乗組員やヒューストンにある管制室にいたNASAのスタッフの活躍によって奇跡的な生還が果たされた。が、実際にはそのNASAのスタッフに「聖書を捨てさせた」男たちが、カリフォルニアとニューヨークにいた。

アクエリアスのエンジン

 カリフォルニアにいたのは、NASAから見ると発注先の下請けにあたる、アポロ13号が積んでいた月着陸船『アクエリアス』のエンジンを製造した会社のジェラルド・エルヴェラムだ。

ジェラルド・エルヴェラム。月着陸船「アクエリアス」のエンジン開発者

 月へ到達するエンジンの企画書を作ったエルヴェラムは、事故の発生を知るとすぐにこれまでため込んだデータを洗い出した。すでにアポロ13号のミッションは、月へ行かずして無事に帰還することへと変わっている。機体は爆発の影響で予定していた軌道を大きく逸れていて、酸素の蓄えも半分を失っている状態だ。

 本来なら月に着陸するとき、たった一度だけ噴射すればいいはずだったアクエリアスのエンジンを何度か噴射させて機体を加速させたい。ただ、そこに問題があった。

 エンジンの内部にある断熱シールドが、一体、何回そして、何分間の噴射に耐えられるのか。NASAはそれを把握していなかった。そこまでの耐熱実験をメーカーに課すこともしていなかった。どれくらい耐えられるのかが分かれば、帰還計画を立てられるが、分からないまま噴射しているとシールドが破れてしまいかねない。これが破れると、エンジンはエンジンとして機能しなくなる。つまり、アポロ13号は地球へ戻る手立てを失う。