ところが徐々に、ジョブズが経営していたもうひとつの会社、NeXTの経営が悪化する。教育市場向けに開発したコンピューターは高額のために売れず、在庫の山を築いた。

NeXTの不振と、スミスの屈辱と

 するとジョブズはピクサーの内部で「すごい作品をつくれ」以外のことも口にするようになった。

 スミスは屈辱の日々を振り返る。

 「彼のところへ行って、“この赤字野郎”とか言われながら小切手を切ってもらうのが私の担当だったんだ」

 そして決裂の日を迎える。

 ジョブズはスミスたちにいつになったら収益を出せるのかと迫り、ジョブズとの交渉ばかりに時間を取られ作品づくりができていなかったスミスの側は売り言葉に買い言葉で「NeXTのほうはどうなんだ」と切り返す。

 そこからスミスは“人生最悪の経験”をする。激化した口論の果てに、ジョブズが大事にしてきたあるルールを犯したのだ。

 「ああ、もう彼と一緒に人生を過ごすことはないだろうなとわかったよ」

 スミスはピクサーを去り、新たにアニメに関するソフトを開発した。

 「そうしたらその会社にスティーブが投資してきたんだ(笑)。儲かると思ったんだろうな、まったく、人を能力でしか判断しない男だよ!」

 その後、ピクサーは『トイ・ストーリー』を公開、大ヒットする。ジョブズはその成果を手にアップルに復帰し、最期のときまでアップルを率い続けた。