会社を追われたどん底時代のジョブズを証言するピクサー創立者のアルヴィ・レイ・スミス

 発言の主はアルヴィ・レイ・スミス。ルーカスフィルムから独立した当時のピクサーの経営者だ。ピクサーとはもちろん、アニメ『トイ・ストーリー』などで知られる映像制作会社のこと。ピクサー設立からしばらくして、ジョブズはピクサーの経営に関わるようになった。

 ジョブズと共に働くようになった日のことを、スミスはこう振り返る。

 「素晴らしい日だったよ。スティーブ・ジョブズって奴が、まだ本当はどんな奴かわかっていなかったからね」

ルーカスの離婚と、ジョブズの追放と

 なぜここまで嫌うのか。その理由はスミス自身が明かしていく。

 その頃のスミスにとって、フルCGの映画をつくることが長年の夢だった。それだけの腕があることも自負していた。そこへ、自ら設立したアップルを追放されそうになったジョブズが声をかけてきた。「一緒に、やってみないか」と。

 スミスの側にも、ジョブズと組みたい理由があった。ルーカスフィルムの先行きが不透明になっていたのだ。

 「ジョージ・ルーカスが離婚したんだ。カリフォルニアでは離婚すると双方の財産を折半する。で、一瞬でピンときた。ジョージは財産を半分失う。もう養ってくれない。それどころかお荷物だと思っている。これはきっとクビになるぞ!とね」

 それを見越してスミスたちが独立のためにつくった会社がピクサーだ。設立直後、アップルを追放されたジョブズが1500万ドルをピクサーのために投資した。

 それは明日をも知れないスミスたちにとって、この上ない朗報だった。

 「私はあの男のことは大嫌いだけど、感謝はしている。彼がお金を出してくれていなければ、私たちは解散していた」

 その後も、ピクサーが赤字になればジョブズが補填をする、その繰り返し。ジョブズはスタッフに「すごい作品をつくれ」とだけ言い続けた。