2001年9月11日、テロの標的となったワールドトレードセンター。アメリカ経済の象徴が崩れ去った

 15年も前のある日に、自分がどこで何をしていたかを思い出すのは難しい。しかし、この日は例外だろう。

 2001年9月11日。アメリカを同時多発テロが襲った。

 午前8時46分(現地時間)、ニューヨークのワールドトレードセンタービル北棟にアメリカン航空11便が激突。突然の「事故」を報じるテレビ中継が始まっていた9時3分、ユナイテッド航空175便が南棟に突入した。

 その時、NHK-BS『アナザーストーリーズ』プロデューサーの久保健一は、NHKの10階にいた。当時は鹿児島支局勤務だったが、たまたま仕事で上京しており、ライブ映像に見入ることになった。

 「アナウンサーが『今、飛行機がビルに突っ込んだように見えました』と言ったのを覚えています。本来、自分の目で見ている光景を説明するなら、『今、衝突しました』のように言えばいい。でも、起きていることが信じられないから、断言するのをためらったのでしょう。私も同じ感覚でした。何が起こっているのか分からないまま、しばらく呆然として、しかしただ黙って画面を見続けるのにも耐えられない気持ちになり、集まってきた他のスタッフとあれこれしゃべり続けていました」

 遠く離れた日本で、テレビ画面を通して見ている人間でさえ平常な気持ちではいられなかった状況の中、例えばアメリカの政治の中枢、ホワイトハウスはどうなっていたのだろうか。

 9月14日21時から放送の『アナザーストーリーズ』では、そこにフォーカスを当てる。

アメリカを襲った同時多発テロ。そのときホワイトハウスでは何が起きていたのか

大統領はフロリダ、国防長官はペンタゴン

 アメリカの首都ワシントンDC。大統領が住み、執務するホワイトハウスに、その年の初めから主となったジョージ・ブッシュ第43代大統領の姿はなかった。およそ1200キロ離れたフロリダで小学校を視察しており、午後にホワイトハウスへ戻る予定だった。

 ドナルド・ラムズフェルド国防長官はペンタゴン(国防総省本庁舎)にいた。

 そしてホワイトハウスでは、リチャード・チェイニー副大統領とコンドリーザ・ライス国家安全保障担当補佐官ら数人の閣僚が、錯綜する情報に翻弄されていた。

 そんな中、ホワイトハウスの南の庭には一人の男が立っていた。

 ゲイリー・ウォルターズ。ホワイトハウスの執事長である。