2009年1月15日、アメリカ・ニューヨークのハドソン川に不時着したUSエアウェイズ1549便と救助を待つ乗客たち(写真:AP/アフロ)

 「2009年1月15日、私はNHKの仙台支局にいて、この映像を見ました」

 NHK-BS『アナザーストーリーズ』プロデューサーの久保健一が振り返る「この映像」とは、アメリカ・ニューヨークのハドソン川に不時着した航空機が映ったものだ。

できる操縦は、2つだけ

 午後3時25分、乗員乗客155人を乗せたUSエアウェイズ1549便は、ニューヨークのラガーディア空港から840キロ先の南部の町シャーロットに向かって飛び立った。約2時間のはずのフライトは、しかし離陸から93秒後、一変する。

 バードストライク。

 鳥が衝突した左翼のエンジンが火を噴いて爆発、同時に全エンジンが出力を消失した。

 この瞬間、高度800メートルに浮かぶ68トンの鉄の塊と化した1549便の機長、チェズレイ・サレンバーガーにできる操縦は2つだけになった。

 方向を変えることと、機首を上げ下げすること。

 シャーロットまでのフライトは望むべくもない。滑空だけで、どこに、どのように機体を下ろすか。

 機長は「ラガーディア空港に引き返す」ことを管制官に告げ、空港は着陸準備に入る。空港まで8キロ。旋回を始めた機長に管制官から13番滑走路への着陸が促される。

 しかし、機長は「できない」と告げ、ハドソン川に向かった。

 空港までの経路の下にはニューヨークの市街地が広がる。滑空だけで滑走路にたどり着けなかったら、壊滅的な事態に陥る。

 機長「ハドソン川に下りる」
 管制官「すまない。もう一度言ってくれ」

 これを最後に交信は途絶え、1549便はハドソン川に不時着。久保が見たのは、川面に浮かぶように横たわる機体の姿だ。

着水を成功させたUSエアウィエズ1549便のチェズレイ・サレンバーガー機長