今度の問題はメインケーブルだった。メインケーブルは鉄のワイヤーを寄り合わせて作られる。鉄は、温度が上がると膨張する。工事の最中に太陽光が当たると、その部分だけが伸びる。これがメインケーブルを正確に張ることの邪魔をした。これができないとサブケーブル代わりの鉄骨も張れず、屋根は吊れず、建物は完成しない。

「ゆく年くる年」で深夜工事を実況

 そこで調整作業は、太陽がなく気温変動の少ない深夜に行うことになった。深夜作業の様子は、年が五輪開催年に改まったときの「ゆく年くる年」で中継されている。この時点で、開会まで、あと10か月と10日。

 このあとの作業は、稼ぐために上京していた職人たちの腕もあって着々と進み、1964年8月31日、開会まで1か月と10日となったその日に、代々木競技場は完成した。

建設にはのべ20万人の作業員が関わり、夜を徹して工事が続けられた

 代々木競技場は2020年の五輪にも使われる。その日に向けて耐震改修工事を施すことが決まっている。それを任されたのは、2020年には88歳になる川口だ。

 この物語の詳細は、7月27日21時からBSプレミアムで放送される『アナザーストーリーズ 東京五輪1964~競技場が間に合わない!?~』で。