ル・コルビュジエ。黒縁眼鏡と蝶ネクタイがトレードマーク

 フランスの名建築家、ル・コルビュジエが設計した17の建築物が、2016年7月、世界遺産に登録された。名だたる17の建築物には、東京・上野にある国立西洋美術館も名を連ねている。国立西洋美術館は、コルビュジエが設計した日本唯一の建物。7月20日放送の『アナザーストーリーズ』(NHK BSプレミアム、21時から)では、コルビュジエを愛する建築家・伊東豊雄がその国立西洋美術館を案内し、『世界ふれあい街歩き』でおなじみのブレのない映像での建築物を紹介し、テレビの前に居ながらの名建築巡りを提供する。

コルビュジエが日本で唯一設計した国立西洋美術館。世界遺産に登録された

伝統より合理性、都市改造の誘惑

 国立西洋美術館がオープンしたのは1959年6月、戦後14年目のことだ。戦時中にフランス政府に没収された実業家・松方幸次郎の西洋画コレクションの返還寄贈が決まったことを受け、日仏国交回復の象徴として新美術館の建設が決まり、その設計者にコルビュジエが選ばれたのだ。すでにコルビュジエは、17階建ての高層アパート『ユニテ・ダビタシオン』や20世紀の最高傑作とも呼ばれる『ロンシャンの礼拝堂』で名をはせた人物だった。

フランスにあるロンシャンの礼拝堂。カトリック・ドミニコ会の巡礼地として建てられた

 スイスに生まれ、フランスで活動してきたコルビュジエは1931年に完成した個人宅『サヴォア邸』の設計でその名を知られる存在になりつつあった。当時の建築物には珍しい大きな窓や屋上庭園は、伝統を冒涜するものと受け止められたが、しかし、流行していた結核の当時の予防法は、日光浴。だったら自然光を取り入れやすい家がいい。コルビュジエは、伝統よりも合理性と住む人を優先させていた。

サヴォワ邸。コルビュジエ初期の作品で、コルビュジエが唱えた近代建築5原則が明確に表現されている