「スーツの生地を持ってきて、そっからシャツを。あの当時で、そのシャツが4万5000円でしたね」

「深夜作業組」の熱量を最大化せよ

 映画制作中の1972年、大卒会社員の初任給は5万円台である。

 「何枚もつくって。今、それをやったらクビになりますね、はい」

 命じられたわけではない。でも、やってやろうと思ったのには訳がある。
 「監督が上から目線で『お前らオレの言うとおり動け』という態度が1ミリもないんですよ」と山崎。「だからもうみんなが、力が入る」

 深作組とは、深夜作業組――そんな風に自嘲しながらも、全力でリアリティを追求するスタッフを束ねた深作は、名監督であると同時に、“微妙に”現場の熱量を最大化するリーダーだったのだ。

 その過剰な熱が、無名の大部屋俳優だった川谷拓三を個性派俳優として開花させ、当時は人気ドラマ『キイハンター』でアイドル的な立ち位置にあった千葉真一にこんなセリフを言わせた。

 《ワシら美味いもん食うてよ、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの。それも銭がなきゃできやせんで》

『仁義なき戦い』は公開前より続編の制作が決定していた。第2作『仁義なき戦い広島死闘篇』で極悪非道なやくざを演じた俳優・千葉真一さんは、撮影前にその演じた役について大きな壁があったと語る
それまで端役・脇役としてスターを夢見ていた川谷は、シリーズ第3作『仁義なき戦い代理戦争』で千載一遇のチャンスを得る。そこに至るまでの努力とは

 千葉、そして川谷の未亡人へのインタビューも収めたアナザーストーリーズ『映画“仁義なき戦い”情熱が革命を生んだ』の放送は、5月18日水曜午後9時から、NHK BSプレミアムで。

 深作組の多くが、実に楽しげに“微妙に”と口真似をする様は、深作の発した熱が今もなお、彼らの中に息づいていることを示している。(文中敬称略)