疑惑は一人歩きを始めた。魔法の弾丸説を支持する人は、弾丸は背中から入って喉の前から出たことになり、こんなことはあり得ないと主張する。さらに、前の知事には後ろからではなく、右に当たっている。ますます、おかしい。政府は真実を隠蔽している――。

 しかし、クリントは見ていた。

 「私は検視解剖室で、大統領の遺体を見ながら、医師から説明を受けました。大統領の銃創を直接、見たのです。政府の報告通り、1発目の銃弾は、首の後ろから喉へ通り抜けていました」

背中の弾痕、その理由

 ではなぜ、上着の背中に銃弾の跡があるのか。

 2007年に、大統領が撃たれる直前を捉えた、ある映像が公開され、その謎を解くカギがそこに映っていた。事実は案外とシンプルだ。大統領はかつてヘルニアを患ったことがあり、以来、背中を痛めていた。事件当日、大統領はコルセットを身につけていた。そのせいなのか、残された映像を見ると、暗殺直前、大統領の上着はずれ上がっている。

 今回「ケネディ暗殺」を取り上げるNHK-BS『アナザーストーリーズ』プロデューサーの河瀬大作は言う。「あり得ないのは、“魔法の弾丸”の方でした。冷静に考えると、検視もされているし、報告書も残されている。それでも今もなお陰謀論を唱える人はいて、何が本当なのか分かりにくくなってしまっています」。

 クリントは、この魔法の弾丸を含む諸説について、こう語っている。

 「暗殺事件について、新しい説が次々に出てきますが、魔法の言葉になっているのが“説”です。すべて当て推量なんです。人は実際に起こっていないことを考え、架空の人物を設定したりするものです。
 残念なことですが、理解はできます。たった一人の人間が犯したとは信じがたいほど、あまりにも大きな事件だったのです」

夫ケネディの葬儀を取り仕切る、妻ジャクリーン。彼女の運命も事件によって一変した。悲劇のファーストレディーの愛と決意とは…