村の住民からのヒアリングも重ね、手探りで憲法の形を作っていく。
その結果、国で言えば国会に当たる「議会」を作り、内閣に当たる「執行委員会」を作り、そこで行われていることに不服があれば、島民によってリコールができるようにし、権力を分立させた。
「いろいろな憲法学者が見たときに、一番驚く部分じゃないかと思います」(憲法学者の榎澤幸広)

素人集団がなぜ、権力の暴走を抑える仕組みを持つ憲法をつくることができたのか。
空襲被害に遭った島民たちの答え
郷土史家の古橋研一は、大島の位置が大きく関係していると考えている。
戦争末期の大島は、本土防衛の最前線だった。空襲の被害にも遭っている。
「戦争したら、絶対にいいことない。基盤は平和。世界中、仲良くしなければいけないということは、あの戦争で身に沁みていると思います」
〈大島ノ統治権ハ島民二在リ〉も、彼らが自分たちで決めたこと。
結局、大島暫定憲法完成の少し後に、大島は日本の統治下から外れることはないと決められた。草案づくりに奔走した島の人たちは、後に公布された日本国憲法の第1条をどんな思いで読んだだろう。
「自分たちの思いは間違っていなかった。改めて誇らしく思ったんじゃないですか」(中田)
では、日本国憲法に直接、大きな影響を与えた人たちはどんなことを考えていたのか。それについても2月15日水曜21時からNHK-BSプレミアムで放送する「アナザーストーリーズ」で紹介する。ちょっと面倒だが、日本国憲法、それから自民党による改正草案を一読してからだと、面白みが深まるはずだ。(敬称略)
新刊『今だから、話す 6つの事件、その真相』 好評発売中

当連載『時効スクープ~今だから、聞けた』でご紹介してきたNHK-BSプレミアム「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」の数々のストーリー。そこから選りすぐりの6つの事件を収録した書籍ができました。番組ディレクターたちの「現場の声」とともに、事件の新たな一面に光を当てます。 当時は話せなかったが、今なら話せる。いや、「真実」を話しておくべきだ――。過去に埋もれた「思い」を掘り起こすと、「知られざるストーリー」が浮かび上がってきました。
<改めて知る、6つの事件>
●日航機墜落事故 1985 レンズの先、手の温もり、「命の重さ」と向き合った人々 ●チャレンジャー号爆発事故 1986 悲しみを越えて、「夢」を継ぐ者たちがいる ●チェルノブイリ原発事故 1986 隠されたはずの「真実」は、そこに飾られていた ●ベルリンの壁、崩壊 1989 「歴史の闇」を知る者が静かに、重い口を開いた ●ダイアナ妃、事故死 1997 作られたスクープ、彼女の「最後の恋の駆け引き」 ●大統領のスキャンダル 1998 翻弄し、翻弄された3人の女と、2人のクリントン
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