Googleの量子ゲート方式に関しては「化学のシミュレーションに活用できると期待している」(HofmannグループCIO)と語る。VWは11月に発表したプレスリリースでは「電気自動車向けの高性能バッテリーの開発」などに、量子コンピュータを使った化学のシミュレーションが期待できそうだと述べている。

 Googleや米IBMが開発を進めている量子ゲート方式は量子ビットの数が50個前後であり、量子ビットの「エラー訂正」が十分にできないため、限定した用途にしか使えないとされている。量子ビットのエラー訂正ができる「ユニバーサル量子コンピュータ」を実現するためには、数千万~数億個の量子ビットが必要とされるためだ。

高性能バッテリーの開発に役立つ可能性

 しかしエラー訂正ができない量子ゲート方式であっても、、分子や原子の中で発生する量子力学の物理現象をモデル化し、シミュレーションするような用途であれば、従来のコンピュータでは不可能なほどの高速な計算ができるようになるという見方が浮上している。

 Q2B Conferenceに登壇した米Alphabet(Googleの親会社)のベンチャーキャピタル部門、米GVのパートナーであるShaun Maguire氏は、化学シミュレーションを高速化できる量子ビットの数の目安を「5000個」とし、そのような量子コンピュータが6~9年後に商用化するのではないかと予測している。VWは量子コンピュータによって化学シミュレーションが高速化する未来を睨んで、Googleとの共同研究を開始したわけだ。

米GSは金融のリスク計算に期待

 米金融大手のGSからは、研究開発部門のPaul Burchard氏が登壇した(写真3)。Burchard氏によれば同社が量子コンピュータに関心を持ったきっかけは、セキュリティだったという。ユニバーサル量子コンピュータは大きな数の素因数分解ができるとされており、それによって公開鍵暗号方式が破られて「顧客の情報が危険にさらされるのではないか」(Burchard氏)と懸念したためだ。

写真3●米Goldman SachsのPaul Burchard氏
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 しかし前述の通り、大きな数の素因数分解ができるユニバーサル量子コンピュータの実現は、遠い未来のことだと考えられている。むしろ現在のGSは「量子コンピュータを使った『モンテカルロシミュレーション』の高速化などに興味を持っている」(Burchard氏)という。モンテカルロシミュレーションは金融機関のリスク計算などに欠かせない存在であり、現在のGSはモンテカルロシミュレーションのために「膨大な規模のスーパーコンピュータを投入している」(同)からだ。