ブロックチェーンのような非集中型の分散台帳技術は、暗号通貨コミュニティには受け入れられている。しかし、ブロックチェーンを使った「スマート・コントラクト・システム」のようなものを実現するには、まだ多くの技術開発が必要だと見ている。

 ブロックチェーンをファイルストレージに活用するというアイデアを提案する人もいる。米Dropboxは中央集中型のストレージシステムと巨大キャッシュシステムで、非常にスケーラブルな(拡張性の高い)ストレージシステムを実現している。ファイルストレージを実現するなら、Dropboxのやり方が現在のベストプラクティスであり、別の手法を選ぶ必要はない。

 繰り返すが、我々は製品思考の会社だ。現段階のブロックチェーンで、顧客に本当に役立つ製品やサービスを実現するのは難しい。

最後に、トランザクション処理の研究者であり、「結果整合性」を提案したVogels氏に、「Amazon Aurora」に追加した「マルチマスター」機能について聞きたい。米Googleの「Cloud Spanner」は分散トランザクションを実現するため、衛星通信や原子時計を使った時刻同期技術を使っている。AWSも今回、衛星通信や原子時計を使う「Amazon Time Sync Service」というサービスを発表した。Amazon Auroraの分散トランザクションは、このサービスを使っているのか。

Vogels CTO 使っていない。詳細は言えないが、Amazon Auroraマルチマスターでは、従来とは全く異なる分散合意プロトコルを使っている。これは我々が何年もかけて独自に開発したものだ。

 かつては分散合意プロトコルが存在しなかったため、結果整合性をデータベース(DB)で使わざるを得なかった。しかし分散合意プロトコルができたおかげで、高い一貫性を保ちながら、世界中にマスターデータを配置できるマルチマスター方式の分散DBを実現できた。

どちらの整合性を選ぶかはユーザー次第

 我々は「Amazon DynamoDB」でも、マルチマスター構成を実現している。どのデータをどのリージョンに配置するかといったことを、ユーザーが気にする必要はない。ただし、強い整合性を保ったデータ更新は、結果整合性に基づくデータ更新よりもコストがかかる仕組みになっている。どちらの整合性を選ぶかは、ユーザーに委ねられている。

「Paxos」のような既存の分散合意プロトコルは使っていないのか。

Vogels CTO 我々は自社でプロトコルを開発した。

プロトコルの詳細を論文で発表する予定はあるか。

Vogels CTO 分からない。Amazon Auroraのストレージシステムやキャッシュシステムについては、ブログでいくつかの解説を公開している。分散合意プロトコルに関してもブログで解説する日が来るかもしれないが、本当に来るかどうかは今のところ分からない。