AWSは今回のre:Inventで「Alexa for Business」を発表した。AWSは機械学習を企業の全領域に広めようとしているのか。

Vogels CTO 我々の原則は「顧客視点」だ。「Amazon.com」でAlexa関連のカスタマーレビューを見てもらえれば分かるが、顧客は皆、Alexaに「五つ星」を付けている。そして現在、多くの消費者が「なぜオフィスでは(自宅のように)Alexaを使えないんだ」と思い始めている。

 家庭では音声で呼びかけるだけで照明をオン・オフできるのに、オフィスでは照明のスイッチを探し回らなければいけない。オフィスでも家庭と同じように、音声アシスタントのような使い勝手の良いユーザーインタフェース(UI)を使いたい。そんな顧客の声に応じて開発したのがAlexa for Businessだ。

AWS re:Invent 2017で講演するVogels CTO
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 ビジネスの現場でテクノロジーを活用するのであれば、集中管理の仕組みが欠かせない。Alexa for Businessを使うことで、システム管理者はAlexaを搭載したデバイスを集中管理でき、デバイス上で利用できる「スキル(Alexaのアプリケーションに相当するもの)」を選んだり、デバイスを利用できるユーザーを限定したりできる。

商業施設でも音声アシスタントは役立つ

 ホテルのような商業施設でも、Alexaは有効活用できる。今回、私が泊まっているホテルの部屋には、4種類のリモコンやスイッチがあった。テレビ用、もう1台のテレビ用、カーテンの開閉用といった具合だ。もしホテルの部屋をコントロールできるAlexaスキルがあれば、リモコンを使わなくても「Alexa、(スポーツ放送局の)『ESPN』を付けて」と呼びかければよくなる。実際、ラスベガスの高級ホテル「Wynn」がスイートルームにAlexaを導入する予定だ。

音声アシスタントを業務システムで利用する場合、ユーザー認証のような仕組みが不可欠だ。Alexa for Businessはその問題にどう対処するのか。

Vogels CTO Alexa for Businessでは、会議室などに設置する誰でも利用できる共用デバイスと、各人の机の上で使用する1人のユーザーアカウントにひも付いた専用デバイスの2つを設定できる。専用デバイスからはユーザー情報などにはアクセスできるが、共用デバイスからはアクセスできない。

 音声に基づいてユーザーが誰かを識別する「Voice ID」のような技術は、現状では時期尚早で、業務システムで活用するのは難しい。家庭ではAlexaはユーザーが誰かを識別し、そのユーザーに最適な音楽を再生したりできる。しかし、その技術を企業内のユーザー認証に利用することは考えていない。音声アシスタントのユーザー認証はまだまだ研究開発が必要だ。

AWSはユーザー企業による機械学習の活用をどう支援していくのか。

Vogels CTO AWSの「ソリューションアーキテクト」や「テクノロジー・アカウント・マネジャー(TAM)」と呼ばれるテクノロジーの知識がある技術者が、ユーザー企業を支援していく。機械学習を活用するには、ユーザー企業にどのようなデータが必要なのかを見極める必要がある。Amazonには機械学習に関する過去25年に及ぶ膨大なノウハウの蓄積がある。我々の知見をユーザー企業に伝授していく。

IT業界に「セルフサービス・モデル」を広めたAWSが、機械学習に関しては人間によるサポートサービスを重視している。

Vogels CTO 我々は製品思考の会社であり、常に顧客の声に耳を傾けている。過去の自分たちの決定を神聖化し、それに固執することはない。

AWSも人によるサービスを重視

 例えば、我々はかつて「マーケティング人材や営業スタッフは不要だ」と考えていた。しかし顧客の声を聞くと、人間によるコミュニケーションを求めていることが分かった。AWSではセルフサービスで何でもできるが、それよりも営業担当者に電話をして問題を解決したいと考える顧客もいた。だから我々は営業組織を整備し、サポート組織も整えた。

 我々はサポート組織をコスト部門とは考えていない。顧客との長期的な関係性という「価値」を生み出す部門と定義している。

AWSはブロックチェーンに冷淡なように見える。MicrosoftやIBMといった競合はブロックチェーンのクラウドサービスを提供しているが、AWSにはそのようなサービスが見当たらない。

Vogels CTO ブロックチェーンに「技術的な興味がない」ということではない。しかし、サービス提供となると、話は別だ。今も多くの顧客がAWSのITインフラストラクチャー上にブロックチェーンを構築しており、顧客からブロックチェーンに関する問い合わせを受けることもある。しかし、我々がブロックチェーンのサービスを提供していないのは、暗号通貨以外のアプリケーションの必要性が見えていないからだ。