AnnapurnaLabsが開発したAWS専用ASICの物理サーバーへの搭載は2017年に始めた。2017年8月に開始した「VMware Cloud on AWS」、2017年11月に発表した「C5」インスタンス、「M5」インスタンス、「ベアメタルインスタンス」が、AWS専用ASICを搭載するインフラを利用している。AWS専用ASICを搭載することで、かつてはハイパーバイザーとCPUが担っていた処理のほぼ全てがASICにオフロードされ、物理サーバーのCPUパワーは100%、ゲストの仮想マシンに振り向けられるようになった。

ハイパーバイザーも全面刷新

 AWS専用ASICの投入と同時に、ハイパーバイザーも全面的に刷新した。従来の「Xen」ハイパーバイザーではなく、AWS専用ASICに最適化した「KVM」ベースの新しいハイパーバイザーを開発したのだ。AWSはこのハイパーバイザーを「Nitroハイパーバイザー」と呼んでいる。

 「ハイパーバイザーが担っていた処理の全てがASICにオフロードされたため、ハイパーバイザーがやるべき処理が無くなってしまった。そこでAWS専用ASICに特化した超軽量ハイパーバイザーを自社で開発することにした」。AWSのSingh氏はそう説明する。つまりEC2の新インフラであるNitroによって、ハイパーバイザーなどのソフトウエアサイドと、ASICを含めたハードウエアサイドの両方を全面的に刷新したのだ(写真3)。

写真3●「Nitro」の概要
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 AnnapurnaLabsが2018年に投入する次世代ASICは、トランジスターの数が2016年に投入したASICに比べて2倍に増えるという。専用ASICの性能を大幅に強化することによって、ライバルに差を付けることを狙う。

専用ASICを選んだAWS、FPGAのMicrosoft

 Desantis氏は2015年の時点で、AWSとしてはハードウエアを強化する方向性として「商用ASICを使用する」「FPGA(内部の論理回路をプログラミングして再構成できるチップ)を採用する」「専用(カスタム)ASICを採用する」という三つの道があったと振り返る。AWSの規模であれば専用ASICを開発しても十分採算が合うと考え、専用ASICを選ぶ道を選択したという。

 ハードウエアを強化する手段としてFPGAを選んだクラウドベンダーもある。AWSの最大のライバルである米Microsoftだ。Microsoftは2015年末からクラウドサービスの「Microsoft Azure」において、新規に追加した物理サーバー全てに同社が独自開発したFPGAボードを搭載し、ネットワーク処理などをCPUからオフロードしている。

 2017年に明らかになったのは、AWSとMicrosoftというクラウド業界の巨人がクラウドインフラにASICやFPGAを投入し、専用ハードウエアの力によってクラウドの性能を向上してきたという事実である。つまり「クラウドはコモディティ(日用品)のハードウエアで成り立っている」という認識は、完全に過去ものになった。今日のクラウドは、市場では手に入らないクラウドに特化したハードウエアによって成り立っているのである。