同様の取り組みはセキュリティ業界にも広がっている。「当社は日本市場への参入に当たってテクニカル・アカウント・マネジャー(TAM)の採用を最優先した」。そう語るのはエンドポイント管理ソフトウエアを販売する米TaniumのOrion Hindawi CEOだ(写真2)。

写真2●米TaniumのOrion Hindawi CEO
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 IT業界でテクニカル・アカウント・マネジャー(TAM)といえば、ユーザー企業にひも付けられた技術サポート担当者を指す。TaniumのTAMも顧客に対する技術サポートを提供する点は他社と同じ。しかし、Taniumは「TAMを単なる技術サポート担当者ではなく、顧客の悩み解決を通じてビジネスの成長に寄与する職種だと位置付けている」(Hindawi氏)。顧客からの問い合わせを起点にサポートするのではなく、TAMが営業担当者のように顧客を訪問し、製品の活用手法を提案する活動を重視する。

 Taniumはエンドポイント管理ソフトウエアをサブスクリプション型で提供している。PC上で稼働するプログラムの振る舞いを分析してウイルス感染などを検出するセキュリティ機能に加えて、PCのライセンス管理やパッチ管理などクライアント管理機能も提供する点が特徴だ。「サービスに満足してもらえなければ、ユーザー企業はサブスクリプションの契約をやめてしまう。その点はSaaSと変わらない」。TaniumのHindawi氏はそう語る。

お手本はSalesforce

 売る前よりも売った後の取り組みを重視するという昨今のITベンダーの戦略は、米Salesforce.comの「カスタマーサクセス」の取り組みに端を発する。TaniumのHindawi氏は「Salesforceのカスタマーサクセス部門の経験者をスカウトして手法をよく学んだ」と語る。

 Salesforceは2000年代前半からカスタマーサクセスの概念を提唱し、顧客を継続的にサポートし続ける取り組みを重視する。自社の取り組みを同社のCRM(顧客関係管理)のSaaSに実装し続けてきた。

 カスタマーサクセスという用語はもはやSalesforceの社内を越えて、様々なITベンダーで使われ始めている。米Microsoftも2017年7月に「カスタマーサクセス部門」を新設。「クラウド・ソリューション・アーキテクト」や「データ・ソリューション・アーキテクト」といった肩書きの技術者を配置し、ユーザー企業のクラウド導入支援を通じてサブスクリプションの拡大を図っている。

 米Oracleにもカスタマーサクセス部門が存在する。クラウドサービスの利用契約を結んだユーザー企業を担当者が定期的に訪問し、クラウド活用を提案するといった取り組みを進める。

 先に紹介したLookerのカスタマーラブ部門は、Salesforceのカスタマーサクセスを「より過激」にしたものだ。Taniumの取り組みは、カスタマーサクセスの考え方がセキュリティベンダーにまで広がっていることを示している。かつてのITベンダーの営業といえば「売りっぱなし」が当たり前だったが、もはや完全に過去のものになったと言えそうだ。