「調理家電を作った経験はなかった。しかし、家電市場は競争が激しいのにレガシーな(設計が古い)製品ばかり。プロセッサの低価格化と性能向上によって、あらゆるデバイスでAIを活用できるようになった今、家電市場でもAIがゲームチェンジャーの鍵を握ると考え、家電市場での起業を決めた」。JuneのMatt Van Horn CEO(最高経営責任者)はそう語る(写真5)。

写真5●JuneのMatt Van Horn CEO(最高経営責任者)
写真5●JuneのMatt Van Horn CEO(最高経営責任者)
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 Van Horn氏もアップル出身で、2007年に米Lyftの前身であるZimrideを創業した後、ソーシャルブックマークの米Diggやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の米Pathの幹部を務めた経験がある。

調理家電だが強みはソフト

 Van Horn CEOは「我々の強みはソフトウエア」と言い切る。ここでいうソフトにはレシピも含まれる。同社が開発するレシピは人間が読むものではなく、オーブンに実行させる「プログラム」として実装されているからだ。

 例えばベーコンの調理レシピであれば、1枚のベーコンだけを調理するのか、9枚を一度に調理するのか。薄いベーコンか、分厚いベーコンか。カリカリに焼くのか、しっとりと焼くのか。36ものシナリオを考えて、それぞれに応じたレシピプログラムを開発したという。レシピプログラムはマルチステップ構造になっており、それぞれのステップでプログラムがセンサーの情報から調理加減を判断し、次に進むステップを決める。そうして最適な調理工程をオーブン自身が決めるのだ。

 オーブンの前面に搭載する液晶モニターには「あと何分で調理が終わるか」も表示される。これは単なる「タイマー」ではない。調理の状況に応じて、時間はリアルタイムに変化する。「『Google Maps』のカーナビゲーション機能が表示する目的地までの到着時間が、渋滞状況に応じてリアルタイムに変化するのと同じだ」。Van Horn CEOはそう説明する。

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