シリコンバレーでは今、調理家電の世界でもAI(人工知能)革命が進行中だ。米Juneが販売する「June Intelligent Oven」は、米NVIDIAのGPU(画像処理半導体)を搭載し、ディープラーニング(深層学習)ベースの画像認識AIが食材の種類や焼き加減を識別。プロ並みの調理を実現するという。
米サンフランシスコに拠点を置くJuneが2016年12月に発売したJune Intelligent Ovenは、庫内に取り付けたHD(高精細)カメラが食材を撮影し、深層学習ベースの画像認識AIが食材の種類や状態を識別して、その食材に最適なレシピをユーザーに提案したり、食材の状態に応じた焼き加減を自動的に調節したりしてくれる(写真1)。価格は1495ドルで、自社サイトだけでなく米Amazon.comなどでも販売する。
ユーザーに提案するレシピは50種類。どのレシピもJune所属のシェフが開発したものだ。例えばステーキであれば、オーブンの庫内に入れられた肉の種類が「フィレ」なのか、「トマホーク(骨付き肉)」なのかをAIが判断する。そのうえでユーザーが焼き加減を「ミディアム」「ウェルダン」などと選択すると、あとはオーブンが自動的に調理してくれる。
June Intelligent Ovenは、カメラ以外にも様々なセンサーを搭載する。庫内の温度を測るセンサーや食材内部の温度を測る差し込み型の温度センサー、食材の重さを量るセンサーなどで、これらのセンサーの情報に基づいてプログラムが6本のヒーターと温度調整ファンを細かくコントロール。庫内の温度を自動的に調節する(写真2)。
AIが完璧な焼き色を実現
食材の「焼き色」は庫内のHDカメラと画像認識AIがリアルタイムで監視しており、焼きムラが生じないように温度を調整している。例えば、ケーキのように焼きムラが生じやすいメニューでも、June Intelligent Ovenであれば短時間で、しかもきれいに焼き上げられるという(写真3)。
オーブン本体のユーザーインタフェース(UI)は、本体前面の液晶モニターと「ダイヤル」だ(写真4)。かつての「iPod」に似たUIだが、それもそのはず。Juneの共同創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるNikhil Bhogal氏は、米アップルで「iPhone」のカメラ開発を担当していたエンジニアだ。iPhoneカメラのパノラマ写真機能や顔認識機能の開発に関わったという。Juneの従業員は40人で、そのうちの半数がアップル出身者なのだという。
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