MicrosoftはAzureの提供を2008年に開始して以来、ストレージのコストを98%も削減してきたという。ストレージベンダーが販売する専用のストレージ装置を使用するのではなく、Microsoftが自社開発したサーバーの内蔵ストレージとソフトウエアの組み合わせで、爆発的に増えるストレージ需要に対応すると共に、コスト削減を実現してきた。Russinovich氏はAzureのストレージシステムについて「ゼタバイト(ペタバイトの百万倍)のスケールになろうとしている」と説明する。

 このような膨大なデータは、バックアップするのも大変だ。Russinovich氏はMicrosoft Azureのデータセンターでは、バックアップ用途に米IBMの大型磁気テープライブラリ「TS3500」を使用していることを明かした。TS3500は最大1万2000本の磁気テープを格納できる。

1ラックで11.5PB、バックアップ専用ストレージ

 またMicrosoftは「Pelican」という名称の、バックアップ専用のストレージ装置も独自開発している(写真5)。1つのサーバーラックに1152個ものハードディスクを搭載するシステムで、10テラバイトのハードディスクドライブを使用する場合の容量は11.5ペタバイトにも達する。1152個のハードディスクを制御するのは2台のサーバーで、各サーバーとはPCIeバスで接続する。

写真5●バックアップ専用ストレージ「Pelican」
写真5●バックアップ専用ストレージ「Pelican」
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 通常のハードディスクはデータを取り出す際の遅延がミリ秒単位で、磁気テープの場合はその遅延が時間単位になるが、Pelicanの遅延は通常のハードディスクと磁気テープの中間に当たる秒単位の遅延でデータを取り出せるようになるという。

 Microsoftは現在、次世代のストレージデバイスも開発中だ。記録メディアに「石英ガラス」を使用する「Project Silica」(写真6)や、記録メディアにDNAを使用する「Project Palix」などだ(写真7)。Project Palixの場合、1つのサーバーラックで1ゼタバイトものデータを保存できるようになるという。

写真6●石英ガラスを使うストレージ「Project Silica」
写真6●石英ガラスを使うストレージ「Project Silica」
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写真7●DNAを使うストレージ「Project Palix」
写真7●DNAを使うストレージ「Project Palix」
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 ハードウエアメーカーとしてのMicrosoftの実力は、年々高まり続けている。Russinovich氏の講演から、改めてそれが明白となった。

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