ここ数年、大手自動車メーカーがシリコンバレーにあるスタートアップに出資したり、スタートアップをそのまま買収したりするケースが増えている()。今回のNautoのような自動運転に必要なソフトウエアやハードウエアを開発するスタートアップや、タクシーなどのオンデマンド配車を実現するスタートアップが出資や買収の対象になっている。

表●自動車メーカーによるスタートアップへの出資や買収
メーカー時期条件対象事業内容
独BMW16年10月出資米Nautoドライバー行動分析
16年5月出資米Scoop Technologies相乗りサービス
16年4月出資米RideCell輸送管理ソフト
15年1月出資イスラエルMoovit乗り換え案内ソフト
14年11月出資米Zendriveドライバー行動分析
独Daimler16年7月出資英Hail配車サービス
16年7月買収米FlightCarレンタカーサービス
14年9月買収独Intelligent Apps配車サービス
14年9月買収米RideScout配車サービス
13年12月出資独Blacklaneハイヤー予約サービス
米Ford Motor16年9月買収米Chariotオンデマンド・バス・サービス
16年8月買収イスラエルSAIPS画像認識技術
16年7月出資米VelodyneLIDAR
16年7月出資米Civil Maps地図情報
米General Motors16年5月買収米Cruise Automation自動運転技術
16年1月出資米Lyft配車サービス
16年1月買収米SideCar Technologies配車サービス
トヨタ自動車16年10月出資米Nautoドライバー行動分析
16年5月出資米Uber Technologies配車サービス
15年12月出資Preferred Networksディープラーニング
独Volkswagen16年5月出資米Gett配車サービス
(独Audi)16年1月出資米Silvercarレンタカーサービス

 そもそも従来は、自動車産業におけるスタートアップ自体が少なかった。自動車産業は、巨大な自動車メーカーが垂直統合的に支配してきた産業であり、スタートアップがそうした「ケイレツ」に割り込むのは困難だった。

 しかし近年、巨大企業が垂直統合的に支配するさまざまな産業を分解(アンバンドリング)しようという動きが、シリコンバレーで広がっている。それに伴い、自動車産業で勝負をしようというスタートアップが増加しているのだ。

 アンバンドリングとはもともと、シリコンバレー企業がコンピュータの世界で成し遂げてたことだ。1980年代まで、コンピューターの主役は「メインフレーム(大型汎用機)」で、プロセッサやメモリー、ストレージ、OSなど全ての構成要素を、米IBMなどのメーカーが一元的に顧客に提供していた。

 そうした寡占モデルを、米Intelなどのシリコンバレー企業が分解した。メインフレームに続くパソコンの時代には、プロセッサはIntel、ハードディスクは米Seagate Technology、OSは米Microsoftといった具合に、異なるメーカーの製品を組み合わせてコンピューターを構成するのが当たり前になった。こうした変化がIBMによる市場支配を崩壊させた。