AI(人工知能)プラットフォームの「Einstein」があれば、企業はデータサイエンティストを雇わなくても、高度なデータ分析の恩恵を得られるようになる――。米Salesforce.comのMarc Benioff会長兼CEO(最高経営責任者)は2016年10月5日(米国時間)、「Dreamforce '16」の基調講演でこのような見通しを示した(写真1)。
DreamforceはSalesforceが毎年米サンフランシスコで開催しているイベントで、2016年は17万人を超える事前登録者があったという。ホテルの料金は普段の2~3倍に高騰し、サンフランシスコの街中の交通がまひ状態になる超巨大イベントだ。
ただし目玉となるAIプラットフォームのEinstein自体は、イベントに先立つ9月19日(米国時間)に発表済み(関連記事:米Salesforceが機械学習プラットフォーム「Einstein」を発表)。9月19日はライバルである米Oracleの年次イベント「Oracle OpenWorld 2016」の初日で、Salesforceは新サービスの発表を「競合潰し」に使った格好だった。
そのためDreamforceの基調講演では、Benioff会長やParker Harris共同創業者兼CTO(最高技術責任者)は、同社がEinsteinをリリースした意義の説明などに終始した。
エンタープライズのAIは遅れている
Harris CTOは、業務システムなどいわゆる“エンタープライズ”の世界において、AIの活用が全般的に遅れているとの現状を示した。「消費者向け(コンシューマー)市場の世界では、米Amazon.comや米Apple、米Facebook、米Googleなどの企業が、AIを活用して優れた製品・サービスを提供している。しかしエンタープライズの世界はそうではない」(Harris CTO、写真2)。
エンタープライズの世界でAIの活用が進んでいないのは、「AIの活用に必要となるデータサイエンティストの採用や、巨大なデータを扱う機械学習システムの構築が、一般企業には非常に困難だから」(Harris CTO)。そこでSalesforceは、ユーザー企業に対して人間のデータサイエンティストの代わりに働くAIを提供することを考えたという。それが9月19日に発表したEinsteinだ。
「データサイエンティストでなくても、ディープラーニング(深層学習)のことを知らなくても、誰にでもAIを利用可能にする」。SalesforceのBenioff会長はEinsteinの狙いをそう語っている。
Einsteinは、本来はデータサイエンティストが担う作業を人間に代わって実施する。機械学習に必要なデータをシステムから抽出する作業や、機械学習のアルゴリズムや「予測モデル」の「特徴」を選んだりする作業、機械学習が生成した予測モデルを業務システムに統合する作業などだ(写真3)。
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