米国の大手ハードウエア企業による、ソフトウエア事業の売却が相次いでいる(表1)。米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)を筆頭に、米インテル、米デル・テクノロジーズが立て続けに大規模な事業売却を発表した。ハードの会社がソフト事業を展開するのは難しかったのか。「本業回帰」とも言える一連の動きはそんな感想すら抱かせる。

表1●米ハードメーカーによる主なソフトウエア事業売却
表1●米ハードメーカーによる主なソフトウエア事業売却
[画像のクリックで拡大表示]

 HPEは2016年9月7日(米国時間)、「非中核(ノンコア)」と定義するソフト事業を分離し、英Micro Focusと統合すると発表した。

 HPE(写真1)がソフト事業から全面撤退するわけではない。サーバーやストレージ、ネットワーク機器といったITインフラストラクチャー事業で、いわゆる「Software Defined」を実現するためのソフトは手元に残す。具体的にはITインフラ管理ソフトの「HPE OneView」や、PCサーバーとソフトの組み合わせだけで垂直統合システムを実現する「ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー」のソフトである「HPE Synergy」などを残す。

写真1●米Hewlett Packerd Enterprise(HPE)の本社
写真1●米Hewlett Packerd Enterprise(HPE)の本社

 これら以外の「IT運用管理」や「アプリケーションデリバリ管理」、「エンタープライズセキュリティ」「情報マネジメント&ガバナンス」「ビッグデータ分析」などのソフト事業は分離し、Micro Focusと統合する。見返りにHPEは25億ドルの現金を受け取るほか、Micro Focus株式の50.1%をHPEの既存株主に割り当てる。

 これによってHPEの株主には88億ドルの価値がもたらされるとHPEは説明する。分離はHPEの2017会計年度後半(17年5~10月)に完了する予定だ。

190億ドル以上を費やして買収した事業

 88億ドルで分離するソフト事業は、HPEの前身であるHewlett-Packardがこの10年間に、190億ドル以上を費やして買収したものだ。

表2●旧Hewlett-Packardによる主なソフト企業買収
表2●旧Hewlett-Packardによる主なソフト企業買収
[画像のクリックで拡大表示]

 「ALM」や「AppPulse」などの製品名で販売するアプリケーションデリバリ管理ソフトは、2006年に45億ドルで買収したMercury Interactiveに由来する。「Data Center Automation」などのIT運用管理ソフトは、2007年に16億ドルで買収したOpswareなどの製品。Opswareは、著書「HARD THINGS」で知られるベンチャーキャピタリスト、Ben Horowitz氏が起業した会社だ(表2)。

 セキュリティソフトには、2011年に15億ドルで買収した「ArcSight」や2010年に買収した「Fortify」、2015年に買収したばかりの「Voltage」が含まれる。ビッグデータソフトには、著名なデータベース研究者Michael Stonebraker氏が起業した会社を3億5000万ドルで買収して手に入れたカラム型データベースの「Vertica」に加え、110億ドルで買収した後に不正会計の発覚したAutonomyの検索エンジン「IDOL」が含まれる。

次ページ Micro Focusがソフト大手の仲間入り