スタートアップが製造を依頼する先が中国の工場に落ち着くのは、コスト面から検討した結果だけではないはずだ。新しい産業の担い手であるスタートアップに対して、中国のEMSが一足早く、自分たちをパッケージの一部としてうまく売り込んでいる。そうしたアグレッシブさも手伝っているだろう。

 以前、試作品を素早く作る「ラピッドプロトタイピング」ならぬ「ラピッドマニファクチャリング」(最終製品までも素早く作ってしまう)を実験したチームに聞いたところでは、中国の工場回りの環境は、起業家にピッタリなのだという。小回りの効くEMSがたくさんあって、プロトタイプづくりから部品の調達まで、あっと言う間に何でもできてしまうという。たとえ設計でやり直しが生じても、その調整もかなりスピーディーなのだそうだ。そのため深センは最近、「ハードウエアのシリコンバレー」などと呼ばれている

 スタートアップが手がける新しいハードウエア製品は、これまでの製品のように大量生産されるものではない。個々人に合ったアイテムがマイクロ市場を成し、多品種少量生産の時代になる。そのような時代になれば「アメリカでも製造が可能になる」とか「なんでも『3Dプリンター』で製造可能になると、というのはよく耳にする話だ。

 しかし、中国EMSも現在、高くなる人件費を相殺するためにロボットの導入を急いでいるし、3Dプリンターならば中国でも導入は可能だ。製造現場だけの競争で中国EMSに勝つのは、もはや難しいかもしれない。

変わり始めたアクセラレーターのスタンス

 ここで参考になるのは、サンフランシスコにあるハードウエアアクセラレーターの「Lemnos Labs」が説いていることだ。それは、「真似されないハードウエア製品の参入障壁」とは何か、というもの。ただ単体のハードウエアではなく、「サービスとしてのハードウエア」や「サービスとしてのロボット」を考えろ、と言う。

 つまり、ハードウエアには、それに絡んだソフトウエアやプラットフォームが重要だということだ。ソフトウエアには弱いと言われる日本だが、画期的なソフトウエア機能やプラットフォームを持ったハードウエアが出てくれば、日本の製造業も中国の先を行くエコシステムの一部になると思うのだ。