一つは、メールがハッキングされたものである点。誰か「もう黙っていられない」と内部から告発したのではない。Assange氏はWikiLeaksへ誰が投稿したのかは自分たちにも分からないとしている。それは本当かもしれないが、それでは内容という点ではどうだろうか。

 これまでのWikiLeaksならば、国家の行動や機密文書が公開対象だった。しかし今回は民主党に関わることで、公開されたのは党政治や大統領選の戦略などだった。隠されていたものが見えたということでは興味をひくだろうが、WikiLeaksが掲げていた戦争や腐敗を追及するといった立場とはほど遠い。

メールの内容を精査せずに公開

 内容を精査せずに公開したことも問題だ。公開されたメールの中には、クレジットカードなどの個人情報が含まれていた。内容の精査は、WikiLeaksが何らかの意図を持つ第三者に操られないようにするためにも重要な過程なのだが、それが行われなかった。というよりも、今回はAssange氏自身が漏洩情報を恣意的に利用しているという事態が起こっているのだ。

 内部告発者として有名なEdward Snowden氏は、今回のWikiLeaksのやり方を非難するツイートを投稿したのだが、それに対するWikiLeaksの返答もがっかり感を加えた。「この機会をつかまえていいことを言おうとしても、クリントン氏から恩赦はもらえないだろうよ」。

 Assange氏は、クリントン氏に対して反感を持っているが、だからと言って殊にドナルド・トランプ候補を支持しているようでもない。だが、クリントン氏にダメージを与えれば、結果的にはトランプ候補に有利になる。基本的に、そんなことはお構い無しである。

 Assange氏は、まだまだクリントン氏関連のメールが残されていることをほのめかしており、タイミングを図ってクリントン氏を攻撃するつもりのようだ。今回の出来事で、WikiLeaksが勇気ある内部告発者のための仕組みから、Assange氏個人の感情や思惑に左右される道具になってしまったのが、残念で仕方がない。