米国では民主党、共和党の両方で大統領候補が決まり、これから11月の大統領選まで騒がしい日々が続くことになる。民主党やクリントン一家は、これまでもシリコンバレーとの親和性が高いことで知られる。一方のドナルド・トランプ氏のことを、シリコンバレーのテクノロジー関係者はどう見ているのだろうか。

 先だってテクノロジー関係者をびっくりさせたのは、米PayPal創業者として著名な投資家Peter Thiel氏が、共和党全国大会で壇上に立ってスピーチまでしたことだった。

写真●2016年4月に開催されたFinTechのイベント「LendIt」で講演するPeter Thiel氏
撮影:中田 敦
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 Thiel氏はPayPalの創業で巨額の富を得て、その後は投資家としてシリコンバレーの有力企業に資金を投入してきた。米FacebookもThiel氏が投資した1社。PayPalは米Tesla MotorsのElon Musk氏をはじめとする有力な起業家や投資家を何人も輩出しているが、Thiel氏はそうした「PayPalマフィア」の代表格である。

 Thiel氏はメディア嫌いとして知られており、めったに人前に姿を現さない。それにも関わらずトランプ氏を支持するために5万人以上の共和党員に向かってスピーチし、その様子が全米に中継されたのである。

 Thiel氏は「アメリカの経済が傾いていることを正直に認めるのはトランプ氏だけ」だと主張。それ故にトランプ氏を支持するのだという。もともとThiel氏は究極のリバタリアン(放任主義者)であり、小さい政府、あるいは無政府状態を理想としている。政府よりも市場が国を動かすべきだという考えも相まって、トランプ氏を支持するに至ったと思われる。

 もっともTheil氏には多少エキセントリックなところがある。彼のようにトランプ氏を明らかに支持する人物は、シリコンバレーではかなりまれだ。

 シリコンバレーは従来、進歩的でリベラルな場所として知られてきた。加えて、教育程度が高い知識労働者が集まっていて、金持ちを保護する既得権維持的なスタンスの見られる共和党の政策には、反旗を翻すのが当たり前と考える人々が多い。

 2012年にオバマ大統領が再選された際、シリコンバレーでの支持を調査した「FiveThirtyEight」という有名なメディアは、カリフォルニア州の中でもシリコンバレーではオバマ大統領への支持が倍ほども強かったとしている。また、個人の寄付金で言えば、Google社員の寄付金の97%はオバマ大統領に向けられ、米eBayでも89%がオバマキャンペーンに寄付されたという。

共和党支持の企業トップもトランプ氏には厳しい目線

 このように民主党の地盤が強いシリコンバレーだが、それでも時折、共和党を支持する企業トップが現れていた。米Cisco Systemsの前CEOのJohn Chambers氏は共和党支持者として有名だし、6月に逝去した有名ベンチャーキャピタリストのThomas Perkins氏(米Kleiner Perkins Caufield & Byers創業者)も共和党派だった。著名ベンチャーキャピタリストではMarc Andreessen氏が前回の大統領選で共和党のミット・ロムニー氏に多額の寄付をしたことで知られている。米Hewlett-Packard Enterprise(HPE)のMeg Whitman CEOに至っては、2009年にカリフォルニア知事選に共和党から出馬している。