しかし現在は、デザイナーは製品開発プロセスの最初の段階から参加し、エンジニアとビジネス担当者、デザイナーが密接にコラボレーションして、顧客の「体験」を作り出しています(写真11)。デザイナーはこのようなプロセスにおけるファシリテーターであり、先生であり、リーダーであり、コネクターです。デザイナーが、さまざまな専門家が集まるチームのコラボレーションを円滑化します。

写真11●ミドルウエア開発チームのブース
ミドルウエアの開発にもデザイン思考が採用されている
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 デザイナーは、個人の中からアイデアを引き出し、そのアイデアをほかのチームメンバーと交換し合い、チームとしてのアイデアを形成していくやり方を知っています。これこそがデザイン思考なのです。

デザイン思考を巨大組織で実践するために、IBMはどのような工夫をしていますか。

 デザイン思考を実践するスタジオを増やしたり、デザイナーを雇用したりするだけでなく、エンジニアやビジネス担当者に対するデザイン思考のトレーニングもしています。既に2万5000人のIBM社員にデザイン思考のトレーニングを実施しました。その中の2000人がエグゼクティブやビジネス担当者です。IBMのビジネスを率いているリーダーに、デザイン思考をトレーニングしています。

 デザイン思考をトレーニングする「ブートキャンプ」では、「アクティブラーニング」の考え方を取り入れています。講義形式の研修ではなく、参加者に実際にデザイン思考を実践させながら、そのコンセプトを理解させます。新規に採用したばかりのデザイナーや、デザイン思考を実践するチームに参加する予定のエンジニア、ビジネス部門の重役、営業担当者などにチームを組ませて、デザイン思考を実践させます。

デザイン思考のトレーニングは、顧客向けにも提供していますか。

 はい。ブートキャンプという形式ではありませんが、デザイン思考を体験する機会を顧客向けにも設けています。顧客と共にデザイン思考を実践することで、我々と顧客の相互理解が進み、顧客が抱える問題点が何か分かってきます。また顧客にデザイン思考を体験してもらうことで、IBMが従来とは全く異なるやり方でテクノロジーを生み出そうとしていることが理解して頂けるでしょう。

 デザイン思考のメリットを「PowerPoint」のスライドで伝えることは不可能です。顧客には実際にデザイン思考を体験してもらうしかありません。実際にデザイン思考を体験した顧客からは、非常にポジティブな反応をいただいています。