リストラが続く米IBMだが、その一方で同社はある職種を積極的に増やしている。デザイナーだ。2012年には375人にすぎなかったIBMの社内デザイナーの数は、2015年には1100人にまで増加。さらに2017年には1500人に増やす計画だ。

 IBMの狙いは「デザイン思考」の実践にある。デザイン思考とは、「デザイナーの手法や考え方を応用にした、イノベーションを生み出すための方法論」のこと。米Googleや米Airbnbなどシリコンバレーの有力スタートアップが実践していることで有名だが、伝統的なエンタープライズITベンダーの代表格であるIBMも、実はデザイン思考の熱心な信奉者である。

 「2012年にCEO(最高経営責任者)に就任したGinni Rometty氏は、デザイン思考にIBMの未来を賭けた」。IBMのDesign Principalを務めるDoug Powell氏(写真1)はそう言い切る。「全てのビジネスのデジタル化によって、顧客の姿が急速に変わり始めている。顧客を正しく理解するためには、デザイン思考が必須だと考えた」(Powell氏)ことがその動機だった。

写真1●IBMのDesign Principalを務めるDoug Powell氏
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 デザイン思考ではイノベーションを起こし方を、顧客へのヒアリングのやり方や社内での会議のやり方、プロトタイプ(試作品)のテスト手法、コラボレーションを活性化するオフィスのデザインなどの「方法論」にまで落とし込んで定式化している。

全世界26カ所の「スタジオ」でデザイン思考を実践

写真2●テキサス州オースチンにある「IBM Studio」のロゴ
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 IBMはそうした方法論を実践する施設として「IBM Studio」を世界中の26カ所に設置している(写真2)。スタジオは米国のテキサス州オースチンやニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、英国のロンドンやフランスのパリ、中国の上海などにあり、そこではアプリケーション開発者やマーケティング担当者、そしてデザイナーがオープンなスペースで協業しながら、さまざまなアプリケーションやサービスを開発している。

 例えばオースチンのスタジオには、IBMの「Watosn」を使用するアプリケーションの開発チーム(写真3)や、PaaS(Platform as a Services)である「Bluemix」の開発チーム、コラボレーションアプリケーション「Verse」の開発チーム(写真4)、さらにはセキュリティ製品の開発チーム(写真5)などのブースがあった。ブースではアプリケーション開発者やマーケティング担当者、そしてデザイナーが机を並べ、デザイン思考を実践している。アプリケーション開発者やマーケティング担当者もデザイン思考の研修を受講済みだ。

写真3●Watsonチームのブース
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写真4●Verseチームのブース
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写真5●セキュリティチームのブース
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