量子アニーリング方式の量子コンピュータは、量子ビットをつなぎ合わせることで、特殊な磁性体である「スピングラス」を模した「3次元イジングモデル」という模型を構成する。そして、3次元イジングモデルにおける各スピン間の相互作用のパターン(スピン間で「強磁性」「反強磁性」のどちらの相互作用が働くか)を解きたい最適化問題のパターンに合わせ、そこで「量子力学の焼きなまし現象(量子アニーリング)」を実際に発生させる。量子アニーリングを発生させた後の量子ビットの数値が、解きたい問題の解となる。

 本来であれば、スピン間の相互作用を自由に構成できるよう、すべての量子ビットが相互接続されているのが望ましい。ところがD-Waveの量子コンピュータは、一部の量子ビットだけを相互接続する「キメラグラフ」と呼ばれる形状になっている。D-Waveの量子コンピュータの性能が出ないとされる理由の一つが、このキメラグラフにあると見られている。

 今回Googleが発表したハードウエアでは、スピン間の相互作用は自由に設定できるという。量子ビット同士の相互作用は量子ビットの「周波数」を操作し、同じ周波数の量子ビット間で相互作用が働くようにする(図)。

図●量子ビット間の相互作用の模式図
出典:米Google
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誤り訂正技術を量子アニーリングに応用

 Googleは、量子ゲート方式で確立している「誤り訂正技術」を、今回の方式にも取り入れている。量子アニーリングの提唱者である東工大の西森教授は、「誤り訂正プロトコルを取り入れることで、規模の大きな問題になっても誤りを押さえながら計算することが理論的には可能になる」と評価する。ただし、「誤り訂正が理論的には可能だといっても,実際に実現するには非常に大きなオーバーヘッド(計算に必要な量子ビット数の100倍以上の量子ビットを安定に運用する必要)が生じる。実現可能性は怪しくなる」と短所も指摘している。

 西森教授は今回のGoogleの発表について、「量子ゲート方式の一番重要な使い道である量子シミュレーションを量子アニーリングの実現に使うと発想は面白い。ごく小規模な問題であるにせよ、実際にやってみたらそこそこうまくいくことを示したのは意義深い」と評価する。ただし「今回の方式にも様々な短所がある」(西森教授)ため、既存の量子アニーリング方式を即座に置き換えるかどうかは分からないとしている。