パイロット免許を取得する個人が多い米国では、稼働率の低い教習用小型プロペラ機が大量に存在する。そうした「空き小型プロペラ機」を活用することで、農地の航空写真を安価に撮影しているのがシリコンバレーの「農業テック」スタートアップ、米TerrAvionだ。

 TerrAvionは小型プロペラ機を使って週1回の頻度で撮影した農地の航空写真を、米カリフォルニア州やオレゴン州の農家に対して提供している。撮影する写真はカラー写真、近赤外線写真、遠赤外線写真の3種類。カラー写真からは農地の全体像が、近赤外線写真からは農作物の生育状態が、遠赤外線写真からは農地の温度や農地の水分含有量が分かるという。

 農家はTerrAvionが撮影した航空写真を、Webサイトやスマートフォンのアプリケーションから閲覧する(写真1)。

写真1●航空写真が閲覧できる農家向けスマホアプリ
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 「農家はこれらの航空写真を見れば、農地を自動車で巡回しなくても、農地の状態や農作物の育成状態が手に取るように分かる。農地のどの場所に水を撒くべきか、どの場所で収穫を始めるべきかといった判断の助けになる」。TerrAvionのRobert Morris CEO(最高経営責任者)兼創業者はそう説明する(写真2)。「農地の巡回コストの削減だけでなく、的確な意思決定によって農家の収入増加も可能になる」(Morris CEO)。

写真2●米TerrAvionのRobert Morris CEO(最高経営責任者)兼創業者
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 航空写真を使った農地のモニタリングは、技術的には数十年前から可能だった。例えば「近赤外線写真を使って植物の生育状態をチェックする技術は、第二次世界大戦の頃には確立していた。当時は近赤外線写真を使って、森の中に潜む戦車などの人工物を見つけ出していた」(Morris氏)。

 問題となっていたのはコストだ。農作物の育成状況を確認するのであれば、週1回は農地の航空写真を撮影するのが望ましい。しかしそのためだけに飛行機を飛ばしていたのではコストがかかりすぎる。最近はドローン(小型無人飛行機)を使うことで撮影コストを引き下げようという取り組みが進んでいるが、TerrAvionはドローンを使うよりもさらに安価な方法を見つけた。それが「空き小型プロペラ機」を使った航空写真の撮影だ。

 冒頭に紹介したように、米国には稼働率の低い小型プロペラ機が大量に存在するという。TerrAvionはそうした小型プロペラ機を「Uber」のようなビジネスモデルで安価に借り上げて、航空写真を集める仕組みを作り出した。