いつ聞いても意外に思うのは、「僕は『Waze』を使っている」と相手が言うときだ。相手は、友人であったり、たまたま乗っているタクシーやライドシェアサービスのドライバーだったりする。

 Wazeは2013年にGoogleが買収した、地図とナビゲーションのアプリケーション(アプリ)を開発するイスラエルのスタートアップ。Wazeの特徴は、ユーザーが目撃した交通関連の情報を、アプリを通じてほかのユーザーと共有することにある。例えば「この道路では工事をやっていて車が混んでいる」とか「反対側のレーンで交通事故が起こったようだ」とか「ハイウェイパトロールが橋桁の影に隠れている」といった情報である(写真1、2)。

写真1●Wazeの画面
ユーザーが共有した渋滞情報などが画面に表示されている
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 そうした基本的な情報に加えて「このガソリンスタンドではガソリン代がいくらだ」とか「この道路は今通行止めで袋小路になっている」といった情報も共有されている。道路交通に関するあらゆる状況を、ほかのユーザーに「教えてあげる」ソーシャルネットワーク的な交通情報アプリというわけだ。

 私自身はナビゲーションに使うのはいつも「Googleマップ」だし、知人にもGoogleマップや米Appleの地図のユーザーが多い。だが一方で、このWazeには熱心なユーザーがたくさんいるのだ。

 私がWazeを使わなかったのは、ソーシャルネットワークが集める情報が必ずしも正しいとは限らないだろうと危惧したからだ。多くの人が通る道と、あまり人が通らない道とでは情報量も精度も異なるので、Wazeが提供する情報は信頼できるときとあまり頼りにならないときがあると感じた。シリコンバレーの幹線道路「ハイウェイ101」なら渋滞の情報が正しく出てくるかもしれないが、渋滞が無いとされていた小さな道で車がひどく混んでいるのに巻き込まれるような事態に出くわすのがオチだと考えていた。

まれに見る結束の固いバーチャルコミュニティーを形成

 しかしWazeのユーザーは、私とは逆の考え方だったようだ。情報の量や質に偏りがあったとしても、無いよりはマシ。私が使わないでいた何年もの間、Wazeはこのように考えるユーザーを順調に増やし、まれに見るような結束の固いバーチャルコミュニティーを築いた。

 例えばWazeのユーザーである私の友人に、「情報をシェアするのは面倒じゃない?」と尋ねると、「ぜんぜん。事故を見かけたらタップするだけだよ」と言っていた。そして、30分などのドライブの間、何かあるたびに気軽にタップし続けるのだ。しかも、この人は日常的にはかなり多忙を極める人物である。それでもWazeコミュニティーの一員として毎日を過ごしているのだ。

写真2●渋滞情報の詳細を表示した画面
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 そんなコミュニティーがあるからだろうか、Googleは買収後もWazeを独立したサービスとして運営し続けてきた。Wazeが収集した事故情報などはGoogleマップでも使われているが、ソーシャル交通情報アプリを存続させたのは面白い。シリコンバレーを含むサンフランシスコベイエリアだけでも、Wazeのユーザーは70万人もいるという。