サンフランシスコに拠点を置く米GitHubは、もしかしたら「世界一地味なユニコーン(推定企業評価額が10億ドルを超えるスタートアップ)」かもしれない。同社の「GitHub」はプログラムのソースコードを管理するクラウドサービス。ひたすらアルファベットが並ぶ画面に、派手さは一切無い。

 しかしGitHubは、企業向けソフトウエア業界でも有数の「デザインを重視する企業」だ。その証拠の一つがデザイナーの多さ。同社が雇用する「社員デザイナー」は25人。全社員が562人(2016年4月現在)なので、社員に占める割合は約5%となる。ITベンダーにおけるデザイナーの比率は1~2%以下とみられるので、これはかなり多い。

 GitHubのデザイナーが取り組んでいるのは、プログラマの「開発プロセス」のデザイン(設計)だ。ユーザーはプログラム開発の何に困っていて、どのような機能があれば開発効率を改善できるのか。デザイナーがユーザーを注意深く観察して、新しい機能を生み出しているのだという。シリコンバレーにおけるデザインとは、外見のデザインだけを意味しない――。GitHubの事例はそれを物語る。

 GitHubの推定企業評価額は今や20億ドル(約2200億円)で、「ソースコード共有サービス」という市場で先行する米Microsoftや米Googleといった巨大企業を打ち負かした実績もある(関連記事:AppleやMicrosoftも頼るソフト開発者の中心地、躍進する「GitHub」)。GitHubにおけるデザインの実像を、デザインチームを統括するMark Otto氏(写真1)に話を聞いた。

(聞き手は中田 敦=シリコンバレー支局)

まずはGitHubにおけるデザインチームの概要を教えて下さい。

 大きく分けると、プロダクトデザインのチームと、Webデザインのチームの二つがあります。前者のプロダクトデザインのチームは、ソースコード管理サービスのSaaS(Software as a Service)である「GitHub.com」や、ユーザー企業の社内に閉じたGitHubを運営できる「GitHub Enterprise」、GitHub独自のテキストエディタ「ATOM」などを担当しています。Webデザインのチームは、GitHubのマーケティング用Webサイトのデザインなどを手がけています。

写真1●米GitHubでHead of Designを務めるMark Otto氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●様々なバリエーションの「Octocat」
[画像のクリックで拡大表示]

 もう一つ、GitHubには重要なチームがあります。それはアートチームです。GitHubには専従のイラストレーターやアニメーターがいて、GitHubのマスコット「Octocat(猫とタコを合成したキャラクター)」(写真2、3、4)のイラストなどを量産しています。かわいらしいマスコットやそれをあしらったマグカップやTシャツなどは、GitHubのファンを作る上で欠かせません。

なぜGitHubはデザインを重視しているのでしょうか。

 我々はGitHubという新しいツールを、ユーザーに受け入れてもらう必要があります。そのためには、ツールの使い方をユーザーに教えてあげなければならない訳ですが、ユーザーはGitHubに「何かを教わりにやって来ている」わけではありません。ユーザーは何かアプリケーションの開発がしたくて、GitHubにやって来ます。