データの民主化に関してLi氏は、「Kaggle」の買収を発表した。Kaggleは世界中のデータサイエンティストに対してデータ分析に関する課題を出し、その成果を競わせる「データ予測コンペティション」を実施してるサイトだ。これまでも在野のデータサイエンティストは、Kaggleで公開されているデータセットを活用して、アルゴリズム開発の腕を磨くことができた。GoogleはKaggleを買収することで、Googleが持つデータセットを外部に開放していく。基調講演ではGoogleとKaggleが今後、「YouTube」にアップロードされた800万件のビデオを使用した動画認識コンクールを開催することを発表している。

 才能(タレント)の民主化に関しては、「Advanced Solutions Lab(ASL)」の設立を発表した。これはGoogleがユーザー企業と連携するための社内組織で、ユーザー企業は同ラボに所属する機械学習エキスパートからアルゴリズムに関する教育を受けたり、機械学習の応用について相談したり、Cloud MLなどの使い方を相談したりできるようになる。

 基調講演では新サービスの発表は控えめで、大企業ユーザーの事例紹介や、欧州SAPなどパートナー企業の紹介に時間が多く割かれた。大企業ユーザーとしては、香港上海銀行(HSBC)や米Home Depot、米eBayの「Google Cloud Platform」利用事例や、米Verizonによる「G Suite」の利用事例などが紹介された。

ビッグデータプラットフォームをGoogle Cloudへ移行

 HSBCは数年前に、ビッグデータを社内活用するプラットフォームとして、従来型のデータウエアハウス(DWH)から自社で運営する「Hadoop」「Spark」クラスターに乗り換えたが、今後はGoogle Cloud Platformの利用も検討しているという(写真3)。HSBCのDarryl West CIO(最高情報責任者)は、「Hadoop/Sparkのシステム構築や運用は非常に高度な技術力が必要で、これらを管理することが競争力強化の役に立つのか考え直した」と語る。

写真3●ビッグデータプラットフォームの移行プランを説明する香港上海銀行のDarryl West CIO
[画像のクリックで拡大表示]

 HSBCはGoogle Cloud Platformが備える「BigQuery」や「Cloud ML」などの機能を、マネーロンダリングの検出やトレーディングにおけるリスク分析などに適用する予定だ。HSBCのWest CIOは、「マネーロンダリングを検出するためには、金融取引の時系列データから不正なパターンを見つけ出すことが重要で、機械学習がとても役に立つ。またリスク分析のためには、金融市場のシミュレーションなどを実行するため、大量のコンピューティングパワーを必要とする。こうした用途にGoogle Cloud Platformは適している」と述べている。

 エンタープライズ向けのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)市場では、AWSが圧倒的なリーダーで、Microsoftがそれに続き、Googleは3番手グループに位置づけられている。劣勢を挽回するためには事例が有効と考えたのか、Googleは開発者が多数を占めるGoogle Cloud Nextの基調講演にも関わらず、大企業ユーザー事例の紹介に多くの時間を割いていた。