ただし、その意見表明には温度差がある。移民である自社社員を擁護することに留めるトップや、その延長線上で入国制限に反対するトップ、かなり強い口調で多様性の重要性やアメリカの価値観を掲げて真っ向から対立する立場を明らかにしているトップなどに、対応が分かれた。

 強い口調で意見を表明した代表例が、米Boxのアーロン・レヴィーCEOだ。同氏はTwitterの投稿で「道徳、人道、経済、論理などあらゆるレベルで、この制限措置は間違っており、アメリカの原則から見て完全に非倫理的だ」と述べている。また米Netflix のリード・ヘイスティングズCEOも、「トランプ氏の行動は世界中の当社社員を傷つけ、あまりに非アメリカ的で我々全てに痛みを与えている。さらに悪いのは、この措置のためにアメリカは安全になるどころか、憎しみを煽り同盟国を失うことでさらに危険になる」と述べている。

 これら以外にも米Apple、米Autodesk、米Dropbox、米Etsy、Google、米LinkedIn、米Lyft、米Salesforce.com、米Slack、米Squareなど、シリコンバレーの有名企業が軒並み反対の立場を明らかにしている。テクノロジー企業は、これまでも中国やインドなどから優れたエンジニアを雇ってきたのだが、トランプ大統領は就業ビザである「H-1B」の交付制限も計画中とされ、同政権の動きからは目が離せない状態だ。

 語るだけでなく、行動に出た企業トップもいる。

 米Airbnbのブライアン・チェスキーCEOは、「アメリカに入国できない難民には無料で宿泊場所を提供する」と訴えた。Lyftや米Instacart、Slackなどは、アメリカ自由人権協会(ACLU)に寄付を行っている。Lyftの場合は4年間で100万ドルという多額だ。

人権団体をアクセラレーターが支援

 ACLUは人権と言論の自由の擁護のために活動するNPOで、人権侵害などに際して弁護士を送るなどのサポートを行ってきた。今回は、トランプ政権に対して既に訴訟を起こしており、テクノロジー企業トップらはそうした活動を支えようと、寄付をするだけでなく、一般へ寄付も呼びかけている。その甲斐あって、ACLUに大統領令が発令された週末だけで2400万ドルもの寄付が集まったという。

 そのACLUは、シリコンバレーのアクセラレーターとして知られる米Y Combinatorに、冬クラスの一員として受け入れられることになった。あたかもスタートアップのごとく、テクノロジーを整えて効果的な活動ができるようになるために指南を受け、Y Combinatorの卒業企業からもサポートを得るという。

 ちなみに、Y Combinatorのサム・アルトマンCEOとAlphabet創業者のセルゲイ・ブリン氏は、週末にサンフランシスコ空港での抗議デモに参加していたのが目撃されている。

 ほかにも、共にシアトルを拠点とする米Microsoft、米Amazon.com、米Expediaなどの企業も、地元ワシントン州司法長官がトランプ政権に対して起こした訴訟を支持する表明を行っている。サンフランシスコの米GitHubは、テクノロジー企業に呼びかけて入国措置に対する訴訟に業界としてどんなサポートをすべきかを話し合っている。

 このようにテクノロジー業界はにわかに忙しくなっている。トランプ政権がテクノロジー業界に与えるインパクトは不透明だ。予想されるだけでも、製品の国内生産への圧力、ネット中立性問題、政府による監視問題などさらに数々の問題が降りかかりそうだ。テクノロジー業界には、何としても闘い抜いてほしいと思うばかりである。