「Adobe Senseiを可能にしているのは、Adobeが持つデータとコンテンツの資産(アセット)だ。Adobe Stockには1億以上の画像があり、Document Cloudは900億のPDFファイルを、またMarketing Cloudは70兆件のトランザクション(Web上でユーザーが行ったクリックなどの動作)を管理している。こうしたデータを匿名処理した上でアルゴリズムの学習に利用している」。Parasnis氏はそう説明する。

 Parasnis氏は、Adobeが管理する大量のデータは米Facebookや米Googleにも匹敵する規模だと強調する。FacebookとGoogleが自社のためだけにデータを活用するのに対して、Adobeは例えばMarketing Cloudであれば、顧客企業にユーザー行動のデータを提供する。そこがAdobeと他社の違いになる。

 AdobeではAIや機械学習とうたってはこなかったものの、こうした仕組みを早くから取り入れていた。Photoshopなどが搭載する「Adobe Magic」がそれで、ユーザーの先回りをしてクリエイティブ作業をサポートするような仕組みだった。「Adobe Senseiは、こうしたクリエイターをサポートするリッチな技術セットを、改めて全面的に押し出したもの」(Parasnis氏)となる

人工知能の実現は、機械学習と人間の共同作業

 データを利用したアルゴリズムへの教示は、「機械学習と人間との共同作業」とParasnis氏は言う。「人工知能が人間を置き換えるという主張があるが、コンピュータサイエンスやデータサイエンス、機械学習の専門家らの深い介入なしに、優れた人工知能の機能は達成できない」。人工知能は、機械と人間の共同作業というのが、同氏の見方だ。

 同社ではAdobe Senseiのローンチに伴って、AI事業部に大規模な研究開発の投資をしている。「AIは現在、競争が激化している領域のため」(Parasnis氏)だ。事業部の規模については語れないが、人材、資金共にかなり積極的に投入しているという。

 Parasnis氏はAdobe Senseiによって今後、「データサイエンスとコンテンツのアートの交差点」を目指すとした。複雑化する一方のクリエイティブツールを、自然言語による操作で使いやすくすることもその一つと明かした。

 AI機能は何であれ驚きをもたらすが、Adobeが関わるクリエイティブ領域においては、AIがもたらす感激がビジュアルでドラマティックになる点が興味深い。今後の発展が楽しみである。