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腕のいい画家が描けば、慈しまれる美術品

 恥ずかしながら、この展覧会を見るまで、扇を折り畳んで持ち運べる絵画と考えたことがなかった。扇は面の形がユニークなので、ただ絵を描くだけでも気の利いた構図になる。腕のいい画家が描けば、慈しまれる美術品になる。扇は機能的な道具なので幾何学的な形をしているが、実際に手にすると、とても優美に感じる。それは、平安以来の“絵心”がこの形式に住み着いているからではなかろうか。

 この展覧会で特にセンスを感じた(というのは展覧会のチラシでも使っている駄洒落なのだが……)のは、美しい扇を川に流す「扇流し」という行事の様子を屏風などに描いた作品の数々だ。それ自体貴族たちが楽しむ風流で優雅なイベントだったと想像できるが、屏風などの上でその様子を再現することによって、そのまま画中画が描かれることになる。

「扇流し」を描いた屏風が並んだコーナーの展示風景

 それがまたコラージュのような効果を生み、ただの風景画とは異なる、何かこう実景の中に物語の世界をはめ込んだような幻想的な画面を創出しているのだ。制作した絵師たちもおそらく、絵の中で扇が別の世界を覗く一種の“窓”の役割を果たしていることを実感し、楽しみながら描いたのではないだろうか。